Love Story~たくさんの 恋物語~【黒子のバスケ】
第4章 大好きな人 【~another side~】
説明が終わり、俺は前の方で片づけをしている優奈に近づいた。
ちょっと驚かせてやろうという気持ちと、「触れてみたい」という気持ちが重なり、俺は優奈を後ろから抱きしめていた。
「だ、大ちゃん!!」
さつきの慌てた声が聞こえるが気にしねぇ。
優奈はびっくりして固まっているが、恐る恐る顔をこっちに向ける。
やべぇ、顔が近いじゃねぇかよ・・・
心臓がバクバクする。
俺は平静を装い
「いつバスケ部に見に来るんだよ」
と優奈に聞いてみた。
優奈は
「・・・いろいろと忙しくて」と申し訳なさそうに答える。
チッ、なんだよそれ。
忙しいって、ちょっと見に来る時間もねぇのかよ。
優奈のその言葉に俺は
「生徒会副会長さんだもんな、悪かったよ」
と嫌味をを言ってしまった。
優奈は、目を伏せて悲しそうな顔をしている。
俺は優奈から離れると、さつきと視聴覚室を出た。
「大ちゃん!あんな言い方!」
俺は、さつきが言い終わる前に
「うっせ~な」
とだけ言って、教室に戻った。
なんだよ、見に来る時間もないって。てか、俺は何を期待していたんだ?優奈が見に来るなんて、一言も言ってなかったよな。
俺一人が勝手に期待していたのかよ・・・アホくさ・・・。
強がりを言っては見るものの、胸の奥がズキズキと痛い。
どうしちまったんだよ、俺は・・・
いくら考えても答えなど出るわけもなく。
ただ思い浮かぶのは、優奈の悲しそうな顔ばかりだった。
優奈とは学年も違うし、接点もない。
もしかしたら、もう会えないんじゃねぇか・・・じゃあ、俺から会いに行く?用事もねぇのに?
あ~、考えてもしょうがない。
部活だ、部活。
バスケだ。
バスケをしていれば、余計な事を考えなくていい。
俺はそう思って部活へと急いだ。
しかし・・・
バスケをしていても、優奈の事を考えてしまう。
最初に会った時の顔、そしてあの時の悲しそうな顔・・・
バスケをしていれば見に来てくれるのではないかという期待・・・
「余計に考えてしまうじゃねぇかよ」
俺は、自嘲気味にそう呟いて部活に打ち込んだ。