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短編集《 黒子のバスケ 》

第2章 ヤンチャな男の子/氷室&虹村


「シュウ、オレは絶対に譲らないよ」
「?…おう」



次の練習メニュー、1on1が始まった。
氷室は闘志剥き出しであるが、虹村はその理由もそのこと自体にも気付いてはいない。
そして始まった1on1は、スピードと滑らかな動きで氷室が抜いた。
だが次のターン、虹村のオフェンスとなると、虹村特有である迫力とパワーを生かしたフルドライブに氷室は遅れをとる。
このような競り合いがずっと続き、お互いにディフェンス力が足りないな、と思った。



「シュウ、やるな。何が鈍ってるんだ?」
「いやぁ…結構しんどいんだけど」
「それでも本気でやるのがシュウの良いところだね」
「当たり前だろ。なんかわかんねーけどタツヤの本気度が半端じゃねえんだもんよ」



氷室は現役バスケ部主将として、そして恋敵として、負けるわけにはいかなかった。
一方虹村は、ただ久しぶりのバスケに久しぶりの悪友、その存在に負けたくないという気持ち一本であった。

…この時は。



「シュウ、オレがこんなに本気な理由、教えてあげようか?」
「ん?」
「どうしても良いところを見せたい子がいてね」
「は…?」
「そのつもりが無くとも、君には負けたくないんだよ。シュウ」
「は?え?」



いつもどストレートに気持ちを伝える虹村としては、氷室の言い回しに全く気付かない。
氷室はやれやれ、と言うように息を吐き、改めて虹村に向かって堂々と言った。



「オレはちゃんが好きだ」
「?!」
「シュウにその気がないならもちろん良いけど、あるのなら本気でぶつかりにいくが…どうかな?」
「…な、なにを…」
「どうなんだい、シュウ?」



氷室の眼には、虹村がもう完全に吹っ切れているようには見えなかった。
敵意剥き出しの氷室だからそう見えるのかもしれない、そう思いつつも疑わずにはいられなかった。



「…まさかとは思ったが…やっぱりか」
「どういうことだ?」
「いや、実は会った時からそうかなと思ってたんだよ」
「気付いてたのか?シュウが?」
「何気に失礼だな!…まぁ、お前の考察も合ってなくはねぇよ」



虹村は肯定の意を表した。
つまり、を好きだという気持ちがあると、認めたのだ。
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