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短編集《 黒子のバスケ 》

第4章 【復帰作品】帰る場所/黒子テツヤ






ーー ピンポーン …

ガタガタッ

…パタパタ

ガチャン


「はい」

「ただいま」


開いた扉から覗いた、私がずっと見たかった愛しい人の顔は相変わらず無表情で…
でも、私にはわかってしまった。
そこから溢れる喜びの感情が。


「おかえりなさい」


少し伸びた髪の隙間から見える水色の瞳が、潤んで見えたのは自分の瞳が潤んでいるからだろうか。
それとも、二人とも、か。


「少し、濡れてますね」
「早く会いたくて…」
「君は相変わらずせっかちですね」
「テツヤ君は相変わらず心配性だね」


少し濡れた私の髪をそっと撫でた彼はさりげなく私の荷物を持ち、当たり前のように家の中へ通してくれる。
こうして待ってくれている人がいるということが、「おかえり」と言ってくれる人がいるということが、私のことを愛おしそうに見つめてくれる人が近くにいるということが、こんなにも幸せなんだと改めて気づかさせてくれる。

そして、抱きしめられて伝わる、人の温かさ。


「元気そうで、何よりです」
「うん。風邪、ひかなかったよ」
「さすがです」
「テツヤ君も、元気そうで何より」


5年間の寂しさをいっぱい、今この時に埋め尽くして


「僕は…一度だけ風邪をひきました」
「それ聞いてないなぁ」
「すみません。心配をかけたくなくて」
「一人で大丈夫だった?」
「…黄瀬君がやたらと面倒を見てくれたので…」
「あはは、それ私の差し金だよ」
「えっ」


会えなかった時間の出来事を、夜通し話して


「ふふ。すぐ治った?」
「…治りました」
「ちゃんとお礼言った?」
「言いました…けど、まさか君の差し金とは…」
「ごめんごめん。黄瀬君 約束守ってくれたんだ。よかった」
「いつの間に…」
「あはは」


泣いて、笑って、また今日から

私達の大切な時間を、思い出を、
ここで作り上げていく。


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