第2章 ヤンチャな男の子/氷室&虹村
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いろいろ騒ぎ立ててどうにかこうにか始まった部活。
そんな中、ただ1人先ほどの話を引きずる者がいた。
「…アツシ」
「ん?室ちんどしたの」
「さっきの話だが…」
午前の続きとして行われたのは、ペアを組んでその相手とドリブル・パス練のコーンを使っての練習だ。
氷室は紫原と、虹村は他の3年と組んでいた。
「やっぱりシュウはちゃんが好きなのか?」
「…とりあえず中学の時は」
「そうか…」
「まぁちんはどうだったか知んないけどね」
紫原は氷室の気持ちを知ってか知らずか、そう言った。
ただ、氷室はその言葉で思った。
オレも頑張る余地はある
と。
「ありがとうアツシ」
「ん?うん」
そう、氷室はに惚れていた。
もちろんそうなったのは高2、氷室が転入してきたあの時からである。
そして火花を散らし始めた氷室はスッと彼女の方へ視線を向ける。
「なー。お前今好きな奴いんのか?」
「え?いないけど」
「ふーん、じゃあ高校生になったら女ってそんなもんか」
「何がよ」
「いや、メイクしたりとかさ」
に話しかけているのは虹村だ。
休憩時間である今が、かつての友達である人と話すタイミングである。
そして彼女も暇を潰せる時間である。
そんな2人はとても楽しそうに話していた。
「やっぱりさすが虹村はドリブル上手いね」
「意外と衰えてなかったな」
「ストバスはしてるんでしょ?」
「たまーにな」
氷室はどうしたものか、と考えていた。
やはりこういう時でも衝動で動かないのが氷室である。
「シュウ、次は1on1だよ」
「おっ、いいな。タツヤ相手しろよ」
「もちろん。そのつもりだったよ」
氷室は練習メニューの連絡をしたそのついでに、2人の世界をぶち壊した。
しかも1on1の約束まで取り付け、良いとこを見せるチャンスまでゲットした。
アメリカでは中々良い勝負をしてきたというが、今ではどうだろう。
衰えたという虹村を信じるか、警戒して思い切り行くか。
当然、後者であろう。
「ちゃん」
振り返った氷室は彼女の方へ向き直り、バサッと自分のジャージを彼女の脚に被せた。
「持ってて」
そして誰もが思った。
男前だ…と。