第2章 プロローグ

「スカルうっさい!!あんたの声は耳にくるんだから、近くで叫ばないでよ!!」

「それどころじゃねーって！ほら、これ！画面の端見てみろよ!!」


挙動不審に陥っているスカルをひと睨みして、画面端に目を向ける。
最初に目に飛び込んできたものは、どデカイダークモンスター…
ではなく


「え……誰、この子…」


小さくなって震えている、ネコ族の女の子だった。


「見たことない子だね…『トラクロ』の新メンバーなのかな？」

「いや…それは無いだろう。…そういった情報は…一切流れていないからな…」

「じゃあ、一般客が紛れ込んじまったのか？」

「…だろうな」


ハルテミスとスカルの問に、ユクシィは静かに答える。

それにしても…あっちの世界には音楽スキルを持ったミューモンしか入れないはず。
だとしたら、あの子は只者じゃないのかも…

思考を巡らせている内に、バトルが始まった。
『トラクロ』のメンバーは良い感じに敵の攻撃を避けながら、ダメージを与えている。
でも、それだけじゃ…倒せるのかは、分からない。


「……今からでも…行った方が良いんじゃないか…？」


不意にユクシィが呟いた。
私だって助けに行きたい気持ちはやまやまだ。
だけど、今日のライブ会場からじゃ、どれだけ急いでも半日程時間がかかってしまう。
だから…今回は、当人達に頑張ってもらうしかない。


「あっ…!!!おい！捕まっちまったぞ!!」


スカルの言葉で現実に引き戻される。
『トラクロ』のメンバーは、ダークモンスターの攻撃を食らってしまったらしい。

このままじゃ…３人はダークモンスター化してしまう…
なんで…なんで私は…
肝心なときに、何も出来ないんだろう…

無力な自分を責め立てても、なんの意味もない。
虚しさだけが心の内に広がっていく。