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Birthday Novel

第9章 H27.6.10. 岩泉一


「サンキュー」



あれから、メッセージが書かれたバレーボールとダンベルを貰った。
ダンベルなんて重いもん、この学校帰りに渡すもんじゃねーだろ、と思いつつ実は結構嬉しかったけど。



「オレそろそろ抜けるわ」
「え、岩泉なんか用事あったのか?」
「あーまぁな。約束が」



ただずっと待たせてる奴がいる。
すぐ終わるって言っちまったから急がないと。



「女の子だよ」
「おいコラクソ及川!」
「マジか岩泉!」
「誰だよ!」
「誰でもいいだろ!じゃあな!」
「待て岩泉!」



教室で待ってるって言ってたな。
危なくは無いだろうけどアイツ、じっとしてっかな。
どっちにしても結構待たせてる。

廊下を走り、階段を駆け上がる。
日頃の鍛錬のおかげか息は切れないが、心臓がうるさい。
もうそれは今更考えなくても何でかわかる。
アイツに会うのが楽しみなんだ。
早く会いたい。

柄にも無いのはわかってる。
だけどそれだけ夢中なんだ。
もうどうしようも無いくらい。



「悪りぃ!待たせ…た…」



ようやく着いた教室。
勢い良く開けた教室には、ずっと頭ん中にいた人。が、



「寝てる…のか…」



スヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。
まだ太陽が沈んでいない教室には、光が強く差している。



「おい、焼けちまうぞ」



コイツの肌は白い。
本当に同じ人間かっていうくらい。

前の席に座って、ボーッと眺めてみる。
こうやって改めてよく見ると、顔立ちは綺麗だし髪の毛もサラサラだ。
もう汗ばむ季節なのに、汗の一粒も見えない。



「ん…」
「よぉ、起きたか」
「あ…私寝ちゃって…」



ようやく起きたもののまだ寝ぼけた様子だ。
一体どれくらいこんな無防備に寝てたんだろう。
今ここにいるのがオレじゃなかったらどうするんだ。
…やっぱり待たせるべきじゃなかった。



「…はっ!」
「なんだよ」
「あっ、あの私、えっとね、」
「落ち着け」



何かを思い出し、慌て始める。
さっきまでの大人しそうな寝顔が嘘みたいだ。



「ゴホンッ、えーと、歌います!」
「………は…?」
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