第8章 H27.6.18. 黄瀬涼太
「もしもし!」
『あっ、やっと繋がったー。誕生日おめでとう!涼太!』
「ありがとっち!」
っちはバスケ部のマネージャー。
桃っちの次に優秀だと言われているけど、結構おっちょこちょい。
「メール届いてすぐ着信来たから、まだ見れてないっス」
『いいのいいの!ていうか、メール全然送れないし電話も繋がらないしでどうしようかと思った』
「あー…メール混んでたから…。126件もきたんスよ」
『多っ?!』
っちはオレの好きな人。
可愛くて優しくて、やる時はしっかりやる子で、凄く尊敬もしてるけど守ってあげたいとも思う。
「てかもう夜遅いし寝た方がいいっスよ」
『あ、そっか…』
「っちのお肌が荒れちゃうし」
『ふふ、ありがと。それに学校来たら会えるもんね』
「そっスよ!お喋りはその時までお預けっス」
『うん、じゃあおやすみ』
「おやすみ」
いつか、オレにもっと自信がついたら。
カッコいいと言ってもらえるくらい強くなれたら。
その時にオレの想いをありったけ伝えよう。
…なんて、思い始めてからもう数ヶ月経ってるけど。
「あー…言葉だけじゃなくて、プレゼントとか貰えねーかなー」
とか、ワガママ言ってるうちはオレもまだまだだと思う。
朝、起きたらまた新たにメールが50件届いていた。
もちろんそれは女の子から。
…全く興味無い方の。
「はー…学校嫌だなー…」
のそのそと起き上がりキッチンに行くと、親や姉が「誕生日おめでとう」と言ってくる。
やっぱりこう面と向かって言われるとなんだかドキドキしてくる。
一つ大人になったのか、と。
「また女の子達から山ほどプレゼント貰うんでしょ」
「んー…」
「紙袋いくらか持って行っときなさいね」
そうだ、今日一日は女の子に囲まれ続ける可能性があるんだ。
可能性というかほぼ確信。
正直それが凄くしんどい。