第7章 H27.6.20. 日向翔陽
そんなことを続けて約10ヶ月。
「お前いつんなったら笑うんだよ!」
「笑ってるじゃん。1年の時よりは」
「そーじゃない!」
未だ私を笑わすことを諦めていない。
私も私だが、彼も彼だ。
だけどそんな私達にも少し変化があった。
「しょーちゃん諦め悪すぎ」
「こそな!」
名前で呼び合うほど仲良くなった。
こうなったのはふざけて呼んだのが始まりだっただけだけど。
それに私は諦めが悪いとかじゃなく、"しょーちゃん" と呼んでいる今の方が楽しいのだ。
笑って周りから人がいなくなるのなら、笑わないで周りに誰かがいる方がよっぽどいい。
「てか月島の方が問題ありじゃん。あっちを笑わせなよ」
「月島はいんだよー。1年の時よりはマシになったし」
「私だって」
「はどーーしても笑わせたいの!」
「意味わかんない…」
彼のその謎の踏ん張り具合はバレーで見てきてわかってはいるが、プライベートにまで持ってこなくていいと心底思う。
だけどそれが無ければ私はもしかしたら一人ぼっちだったかもしれない。
そう思えば少しはありがたいと思わなくもない。
「なー、今日くらいは笑ってよ」
「…気が向いたらね」
「いっつもそれ!」
だから、今日くらいは、なんて思うけど。
どのタイミングで笑えばいい?
そもそも笑うってどうやるんだっけ。
自分自身のことなのにもうスッカリわからなくなって、まるでロボットのようだ。
「ぶっかっつー!バッレッえー!」
「ねぇしょーちゃん」
「んっ?わ、あ?!」
日向は落ち着きが無い。
それは入部してすぐにわかった。
それにしても、2年生になってもこれじゃこの先不安だ。
先輩だってしっかりしてるといえば縁下先輩くらいだ。
他は大体危なっかしいとかどこか遠慮がちとか、そんな感じだ。
そんな烏野バレー部に、どうやって安心しろというのか。
「あっぶねー、バランス崩すとこだった」
「バカしょーよー」
「あっ!バカって言う方がバカなんだぞ!」
「ハイハイ」
こんなやり取りをしたかったわけじゃないというのに。
このバカは。
「しょーちゃん、ねぇ」
「なに?」
「誕生日おめでとう」
「えっ?!」
「おめでとう」