第7章 H27.6.20. 日向翔陽
「ってなんでそんな無表情なの?」
入部してから4ヶ月後、隣に座る日向は突然そんなことを言い出した。
「いや…別に私もなりたくてこんなんなワケじゃないよ」
「え、そうなの?」
「うん…まぁ、私が笑うと嫌な気持ちになる人がいるみたいだから」
「?なにそれ?」
「日向はわかんなくていーよ」
日向は一生懸命何かを考えているようだけど、それが私にはサッパリわからない。
そんなに真剣になるほど、何か気になることがあるのだろうか。
私が笑わないと、困ることがあるのだろうか。
「ってさ、笑った方が可愛いと思うんだけど」
「なっ…?!」
ほら、笑ってみるべ!と日向は笑ってみせるが、もう笑顔の作り方なんて忘れてしまった。
ここ最近、多少笑うことはあっても腹の底から笑った記憶がない。
「ったくよー。オレがいつか笑わせてやるからな!覚えとけよ!」
人を指差すな、といつもなら言っていただろう。
だけど今日は少しワクワクしている。
相手が日向だからだろうか。
日向なら私を笑わしてくれると、信じているからだろうか。
それから日向が私に絡むことは増えていったどころか、目が合う度になった。