第1章 H27.8.31. 青峰大輝
「わー、懐かしいっ」
「全然変わってねぇな」
「まぁ、2年くらいしか経ってないしね」
早速の家に着いた一行は、彼女の部屋に入りくつろいでいた。
特に何か仕掛けられているわけでもなく、何かされることもなく、ただ普通に。
「…って、俺らはここに何しに来たんだよ」
「青峰君の誕生日を祝いに?」
「こうやってただくつろいでいるだけでか?!」
「じゃー思い出話でもしよっか!」
「は?」
「だって2年ぶりじゃない、このメンバーが集まったのって」
そう。あれは2年前。
彼らが中学2年生の時のことだった ー
「ハッピバースデートゥーユー」
8月31日、夏休みの最終日。
その日も彼らはの家で青峰の誕生日を祝っていた。
「青峰君誕生日おめでとう!」
「おう」
「もっと喜んでくださいよ」
「そうだよー!せっかくプレゼントとかケーキとか用意したんだから!」
「うっせ」
「照れてるの?」
「うっせ!」
まだ純粋だった彼らは、いつも笑顔だった。
特にこの日は青峰の誕生日を祝うということもあってか、楽しそうに笑っていた。
先日の全中では色々あったりもしたが、それでも笑顔でいられた。
「このケーキ、ちゃんが作ったんだよ!」
「え、マジでか」
「えへへ」
わいわいと他愛もない話をしながらケーキを食べ、プレゼントを渡し、青峰の喜ぶ顔を見て、普通のことが楽しかった。
ー だが、そんななんでもない普通で幸せなことが、ある日から崩れていった。
「いや、なんでそんな暗え話になるんだよ」
「な、なんかつい…」
「でも、こうして普通に話せて良かったです。特に青峰君が」
「……」
そのある日、というのはここにいる全員にとって苦い思い出だ。
「ケ、ケーキ持って来ようか」
「あるのかよ」
「うん、一応…」
そう言っては部屋を出て行った。
「さつきのせいで空気が悪い」
「ご、ごめん…」
「仕方ないですよ。ボクも注意が足りませんでした。…でも、一番辛いのは誰か、わかってますよね?青峰君」
「あ?……チッ、はーあ、ったく…」
そう言って青峰は「便所」と言って部屋を出た。
大丈夫かなぁ、と心配する桃井に黒子は大丈夫ですよ、と微笑んだ。
部屋の空気は少し軽くなっていた。