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Birthday Novel

第4章 H27.7.20. 及川徹



「っあー!美味しかった!」



私の手作りの料理は喜んでもらえたようだ。
本当に満足そうな及川くんに、私も自然と笑みがこぼれる。



「さて、ここからが本番だよ」
「へ?」



パチンと部屋の明かりを消して、冷蔵庫から取り出したものに火を灯す。



「ハッピーバースデー、及川くん」
「…ケーキ!」
「うん、一応…手作りだったり…」
「えっ、マジ?!こんなちっこいの、作ったの?!器用だねー!」



大袈裟に喜んでくれる及川くんに、私まで嬉しくなる。
そんなに甘いものを食べるところを見ないから、どうかと思ったけど良かった。
あとは味の心配だ。



「ん!美味しいよ!」
「ほんと?!…良かった」
「うん、甘さも程良くて俺好き」
「良かっ…んぐ」
「へへっ、お裾分け〜」



パッと口に運ばれたケーキ。
うん、確かに上手くできてる。
ケーキは味見が出来ないから不安だったけど、良かった。
こんな笑顔が見れたら十分だ。



「ん、そうだ。まだあるんだった」
「まだあるの?!家計大丈夫?!」
「バカ、こんな日のために節約してるんだよ」
「…嬉しい」



部屋から取り出してきたのは一つの小包。

正直、何をあげたら喜んでくれるのか、わからなかった。
聞けば勘のいい及川くんへのサプライズにならないし、でもって男の子へのプレゼントは本当に何あげていいかわからなくて。
これは毎年悩まされる。

そんな中で私が選んだのは…、



「時計…」
「就職先ではそういうシンプルな方が良いかなって、思って…」



そう、時計だ。
もう来年からは私達は社会人になる。
もちろん及川くんはこれまでも時計を持っていたけれど、おしゃれなデザインだった。
会社ではシンプルな方が無難だし、というのもあるけど、ぶっちゃけ、ずっと身に付けたりよく見る物をあげたかったというのが実のところだ。
私達は当然別の就職先だから、尚更。

…もちろん、秘密だけど。



「こっ、これ!高いんじゃないの?!大丈夫?!」
「いいの!大丈夫なの!…ちゃんと使ってよ」
「うん…丁度欲しいと思って貯めてたから、嬉しい」
「そっか、良かった」



これ見てを思い出して頑張るね、ってそんな笑顔、ズルいよ及川くん。
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