第4章 H27.7.20. 及川徹
「うん、いい感じ」
「は本当に写真好きだね」
「だって後で見た時にこんなことあったなって思い返せるじゃん」
「まぁね」
「及川くんのバレーしてるところもいっぱい撮ってるよ」
「え?!盗撮!」
「馬鹿言わないで」
写真を好きになったのは、及川くんを好きになってから。
バレーをする姿を写真に収めたいと思ってから、どう撮ればいいかとか考えるうちに気づけば写真自体が大好きになっていた。
そしてバイトで貯めて貯めて、一眼レフを買った。
相当な値段だったけれど、とても気に入っている。
「いっつも2人か景色か俺だしさ…」
「ん?」
「たまにはだけを写そうよ」
「ちょっ、返してよ」
「ハイ、怒った顔いただきました〜」
だからこそ、他の人に触られるのは気が引ける。普通なら。
だけど及川くんなら私が大事にしてる事もわかってるし、2人の思い出が詰まっているものだから触られても大丈夫だ。
だからと言って、自分の写真はちょっと…。
「もー、消すからね」
「えっダメだよ!印刷して」
「ヤダ」
「それが誕生日プレゼントでいいからさー!」
「だったらもっとちゃんとした顔がいい」
こんな怒った顔を印刷して持ってたって縁起悪いじゃん。
てか同じ家にいるのに、必要かなぁ。
私も人の事言えないけど。
「じゃあ俺がカメラ持っとく。それで撮りたい時に撮るよ。それでいいでしょ?」
「…変な顔にならないようにね」
「任せて!」
まぁ、カメラ自体には及川くんも慣れてるだろうし任せるとしよう。
車に戻り、海を離れる。
窓を開けると風が入ってきて気持ちがいい。
運転している及川くんは相変わらずご機嫌で、ニコニコしていてちょっとかわいい。
「なぁに?」
「別に」
「えっ、今俺のこと見つめてたじゃん」
「その先の景色を見てたんだよ」
「うっそだー」
はい、嘘です。
確かにあなた様を見てました。
なのに、なぜかいつも素直になれずこんな態度をとってしまう。
誕生日くらいは素直になりたいと思っていたのに。
「さ、帰ってのんびりしよ〜」
「あれだけで良かったの?」
「の水着姿見れただけで十分だよ」
…及川くんみたいに、私も。
家に着いたら素直解放しよう。
じゃないときっと後悔する。
「変態」
「変態で結構〜」