第4章 H27.7.20. 及川徹
「ささっ、着いたよー!だーっ!」
「わっ」
着いた途端、及川くんは自身のパーカーを一気に脱いで放り投げた。
まったく、子供みたいだ。
「も早くー」
「…覚悟はできてる?」
「もちろんです」
もう来てしまったからには仕方がない。
隠すために着ていたスカートもパーカーも思い切って脱ぐ。
及川くんを見てみると、笑うどころか表情ひとつ変わらない。
「…なんか反応してよ」
「や……あれだね」
「なに」
「想像以上のかわいさに驚いています」
想像以上はこちらも同じだ。
まさか気に入ってもらえるとは。
いつもと違う、かわいいタイプの水着にしたから、正直恥ずかしかった。
だけど及川くんが気に入ってくれたなら結果オーライだ。
「よし、気分いいから早く遊びに行こう」
「えっ、ちょ、待って!!」
なんかウジウジ考えていたのが恥ずかしいくらいだ。
思いっきり走って海に入ると、冷たい海水が火照った体を冷やして気持ちがいい。
「及川くん!早く!」
「えー、なにそれ。超かわいいんだけど」
「うりゃっ」
「わっ、ちょ、つめたっ」
「かわいいとか言うから」
「なんで!褒めてるんじゃん」
「照れる」
「かわい」
こんなに馬鹿みたいにはしゃいだのはいつ振りだろう。
とはいえ、相手が及川くんだからこそだけど。
「はー、喉乾いた」
「飲み物買いに行こっか」
「うん」
高校の時彼に出会えて良かったと心底思った。
彼に恋して良かったと心底思った。
ライバルもいっぱいいたけど、諦めないで良かったと心底思った。
及川くんに出会って幸せだと感じることが多くなった。
「並んでるねぇ」
「んー…」
「、トイレ?」
「えっ」
「行ってきていいよ。俺並んでるから」
「…ありがとう」
こうやって私の気持ち何でもお見通しだし。
…ちょっと恥ずかしいけど。
ちゃんと気をつかえるところはキャプテンだなーとか思ったり。
これだから、どれだけ馬鹿みたいなところを見てもカッコいいと思うし、そんなところも好きなんだ。
「おねーさん暇?」
だから、及川くんといる時くらい気分を害することは起きてほしくない。