第3章 【青峰大輝】変わらない想い
「……」
しかし直ぐ出る事が出来ない。
いざとなるとどうしていいかわからなくなる。
「大輝と話したい」と言っているかのように鳴り続ける携帯を、俺はただ見つめるだけだ。
「はぁ……ったく」
けどいくら経っても切れない着信に覚悟を決めた俺は携帯を耳に当てる。
だが「んだよ」と言っても、向こうからの返事がない。これではただの無言電話だ。
話さねぇならかけてくんなよと思う俺。
この心の声を、実際口にしかけた瞬間には小さな声でこう言った。
本当に本当に小さな声で。
「会いたいっ……」
普通なら聞き取れなくて聞き返しているだろう。
でも俺にはハッキリと聞こえて、胸が大きく跳ね上がった。
久々に耳にした彼女の声。
自分に会いたいと甘える。
断るなんてしたくはない。
なのに返す言葉は「あ?何時だと思ってんだよ」だ。
「ごめんね、でも会いたいの……行ってもいい……?」
「バカ来んじゃねぇよ」
「っ……」
いかにも突き放してる返事に、は涙を堪えてるかのような声を出す。
誰も会いたくないなんて言ってない。
会うならこっちから行くわという意味で「来るな」と言っただけ。
俺はどれだけ気持ちを伝えるのが苦手なんだろうか。
呆れて苦笑してしまう。
「つか泣いてんじゃねーよ」
「泣いてっ……なんかっ……」
「ったく……待ってろ」
でも本当は嬉しい。
から「会いたい」と言ってくれて嬉しかった。
あのまま何もなく、所謂自然消滅になっていたら後味が悪い。
そうはなりたくなかったから、この連絡は俺にとって救いだった。
自分から踏み出せない……照れ屋で意地っ張りで情けない俺。
そんな俺を、は救ってくれた。
たった一言の言葉で。