第4章 【黄瀬涼太】記念日
(わぁぁっ……!近いよ……っ)
それでも彼の顔を見る事が出来ない私の目は、瞼によって完全に視界を遮っていた。
なんでもいいから話してくれればいいのに……涼太くんは何故か無言で私の目の前にいる。
(なんで何も言ってくれないのっ……)
顔が熱い。
この沈黙に堪えられない。
だからいっそこっちから話しかけてみようかと思ったけど、結局何を言ったらいいのかわからず……現状は変わらないまま。
視線を感じるから、涼太くんは絶対私を見ている筈。
なのに黙られると不安だ。
(涼太くんっ……お願いだから何か喋って……っ)
「んっ……!」
そんな時突然唇に熱が触れた。
柔らかいし、涼太くんの香りを強く感じるから……これは間違いない。
私は……今キスされている。
けどただ触れ合うだけのキスで、それ以上の事をしてくる様子がない。
「っ……涼太……くんっ……」
「やっと見てくれたっスね」
驚いた拍子に瞼を上げると、真ん前にいる涼太くんが切なそうに私を見つめていて胸が高鳴った。
涼太くんの熱こもった瞳は苦手。
だけど大好きで……今度は目が離せなくなる。
「っち……」
それから私の髪を優しく指で梳いて……最後頬を撫でた涼太くん。
彼の顔が近付いてきても、自分は背ける事なく目を閉じた。
2回目はさっきとは違う濃いキスで、舌が絡み合う度に少しずつ身体から力が抜けていくのがわかった。
彼にしがみつかないと崩れそうだからそうする。
地味にちょっとずつだけど、涼太くんから離れていってるから服を掴む。
そんな私を支えるように腰に手を回した涼太くんは……
「っち……ごめん俺もう……」
〝抑えられねぇっスわ……〟
そう言って私の頭を押さえながらまた唇を合わせてきた。
顔だけじゃなくて身体まで熱い。
どうにかなってしまいそう。
ただキスをしているだけなのに……涼太くんは私をその気にさせる。
やめたくないと思わせてくる。
「涼太くんっ……」
「どうしたんスか……?」
「もっ……」
「も……?」
「もっと……して……っ」