第4章 【黄瀬涼太】記念日
「ふぅ……」
こうして無事到着した私は、涼太くんが飲み物を取りに行っている間に息を吐いておいた。
何回かお邪魔しているけど、やっぱりまだまだ緊張が取れない。
涼太くんが居るとつい正座してしまったり、時々敬語になってしまったりするのだが……
それはきっと……この場所と目の前にあるベッドのせいだ。
(今日ももしかして……)
「お待たせっス!!」
「きゃぁっ!」
部屋で1人変な事を考えていた私。
そこへいきなり声が飛んできたらそりゃビックリする。
結構本気で叫んでしまったから……涼太くんが少し傷付いてしまったらしく、ドアの前で水を持ったまま項垂れていた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないっスかぁ……」
「ご、ごめんなさい……!」
「別にいいけど……まだ緊張するんスか?敬語っスよ」
「あっ……」
「全くっちは」と笑いながら隣に座った涼太くんを勝手に意識して……今にも倒れてしまいそうな私。
……とか言ってるけど、いざとなると自分もかなりとろけてしまう。
だが問題なのは、情事になると彼が豹変する事。
いつも以上に熱い眼差しで……そしていつも以上に甘い声で私を呼ぶから恥ずかしくてたまらない。
「じゃあ俺が緊張を解いてあげるっス!ちょっと髪あげて?」
「こ、こう……?」
「そうそう!そのままっスよ!」
一体何をするのだろうと思いながら髪をアップにしていると、いきなり首筋に冷たい感覚があった。
よく見てみればそれはさっき買ってくれたネックレス。
涼太くんが私につけてくれたのだ。
「うん!やっぱ似合うっスね!」
「あ、ありがとう……」
キラリと光る小さなハートが可愛い。
可愛いんだけど……涼太くんとの距離が近すぎて、私の心臓は既に破裂しそうだった。
目を合わせる事が出来ない。
徐々に身体を遠ざけてしまう。
そんな私に不満だったのか、彼が突然私の頬に手を添えてきた。
「こっち向いて?」と言葉にしながら。