第4章 【黄瀬涼太】記念日
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「ねぇっち!これとかどうっスか?!」
もう直ぐ空では日が沈みそう。
そんな中、私達は街中にあるお店を色々とハシゴしていた。
今日は記念日だからって、涼太くんが私にプレゼントをと張り切っているのだ。
「可愛いけど……いいよそんな気を使わなくても……」
「俺があげたいだけなんスよ!ねっ!」
「う、うん……」
彼氏が何かくれるとあれば、大体の子は嬉しく思うだろう。
なのに私は逆で……イマイチ喜べなかった。
何故ならさっきから彼の入る所は、どこも高そうなお店ばかりだからだ。
「あっ!これ!っちに似合いそうっスよ!」
「そ、そうかな……?」
「絶対そうっス!」
いつも練習で忙しい彼。
だから物を貰わなくても、ただ一緒に過ごせればそれだけで良かった。
けど涼太くんはとてもノリノリだし、これ以上断るのも悪いなと思った私は……今彼が指差してるやつを買ってもらう事にした。
「ありがとう涼太くん」
「いいんスよ!それより疲れてないっスか?連れ回しちゃったし」
「んー……ちょっとだけ」
「ならウチ行こうっち!」
「きゃっ!」
しかし涼太くんはプレゼントを渡さず、代わりに包みを下げていない方の手で私を強めに引っ張っていく。
行き先はわかっているけど……どうしてそんなに急いでいるのか謎だ。
何か他にも予定があるのだろうか。
「ほら!早く早く!」
「涼太くん待って……っ」
そういえば今日はまだ手を繋ぐ事しかしていない。
彼は私によく抱きついてくる人だから、きっとそうしたくて急いでるんだろう。
歩幅が違うからついて行くのが大変だけど……そんな涼太くんを見てると自然と顔が緩む。
「後もう少しっスよ!」
「うん……!」