第1章 偏屈者の行き着く先は(轟 焦凍)
「なまえ、1人にして悪かった」
轟くんは、僕たちなどまるで無視してなまえの側へ歩み寄った。「中庭のベンチが空いてる。今日の昼はそこで食べよう」
「うん!いいよ。天気もいいしね」
————あれ?
パッとなまえが立ち上がる。周囲が冷凍庫状態だというのに、彼女は全く寒そうに見えない。むしろ頬がほのかに色づいている。
「焦凍!あのね、今日のメインはね、」
「ハンバーグ、だろ。さっき聞いた」
「そうなの!えへへ、今朝も早起きして作ったからね!」
———これって、もしかして……
「なまえちゃん、」と僕はおそるおそる聞いてみた。「君の”個性”って、いうのは……」
「”超断熱”!」
お弁当を鞄にしまい直しながらなまえが片手でピースした。「氷も炎も、へっちゃらな体質なの。私」
「な、なるほどね……」
はは、と力のない笑いが出た。そういうことか。だいたい見えたぞ。
「行こっか、焦凍!」
「……ん」
「轟ィ!」
並んで教室から出て行こうとする2人に、身動きのとれないかっちゃんが吠えた。「その女一体なんなんだよ!ただのフツー科の奴といて、何かメリットあんのかよ!?」
「メリット?」
轟くんは足を止めて、さあな、と笑った。「ただ、こいつはお前の言う、”ただの普通科の女”じゃあ、ないな」
そして彼は、僕らに見せつけるようになまえの肩を抱いて言ったんだ。
「こいつは、俺の許嫁だ」
って。
やっぱり、と僕は思った。
“半冷半燃”という轟くんの個性は、炎と氷の個性をそれぞれ持つ父親と母親の戦略的個性婚によって生まれたものだ。
No.2ヒーロー、エンデヴァーの「最高傑作」
唯一の欠点は、体温調節。
轟くんの右半身の氷結の能力を使う時、懸念されることは行き過ぎた個性の行使による凍傷だ。左半身の燃焼による熱でうまく体温のバランスをとる必要があるけれど、氷も炎も効かないなまえの”超断熱”と掛け合わせれば、そのデメリットもカバーできる。つまり、パワーに上限のない、より弱点の少ない個性になるんだ。