第1章 偏屈者の行き着く先は(轟 焦凍)
にしても、と僕は宙に浮かぶかっちゃんを見上げた。”許嫁”発言が衝撃的すぎたのか、何も言えずに真っ白になって固まっている。
そう。轟くんは父親を憎んでいるはずだ。親の決めた"許嫁"なんて言い方、気に食わないはず。本当は”恋人”でいいはずなのに、それなのに、わざわざ”俺の許嫁”なんて言った理由は1つ。
———その単語が、一番かっちゃんにでかいダメージ与えるからだ………
僕は幼馴染みだからわかる。かっちゃんは昔から横暴だったから、彼女なんてできたこと一回もないんだ。だから、許嫁なんて深い関係を見せつけられたら、頭がキャパオーバーでショートしちゃうんだよね。さすが轟くん、どんな時でも冷静で的確。
そんで、やっぱり、
「焦凍が……私のこと許嫁って紹介してくれた……!」
ぱあっと感激したなまえは、「嬉しい!」と轟くんの腰に抱きついた。「!?」と大きく肩を揺らした轟くんの左手が、ぼふん、と音を立てて炎に包まれる。
げ、と僕たちは一斉にのけぞった。
轟くんの燃焼の個性が、制御不良で暴走してる。
「……なまえ、今すぐ離れろ」
右手で真っ赤な顔を隠しながら轟くんが言う。
「だいじょーぶ!私の身体は燃えないし熱くないから!」
「そういう意味じゃねー、から……!頼む」
———やっぱり、轟くん、なまえちゃんのことすっごく好きなんだ……
無愛想は照れ隠しなんだね、と、滅多に見れない轟くんの火柱を見て思ったけれど、それは僕の心の中だけに留めておくことにしよう。
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あとがき
キャラの中では、轟くんが(今のところ)一番好きです。
2015.6.18