第5章 お兄ちゃんオーバーケア①(轟 焦凍)
▼ 朝2
女子中学生は、悩みが尽きない。
セーラー服の襟を正し、姿見の前でウンウン悩んでいると、冬美姉さんが声をかけてきた。
「どうかしたの?鏡とにらめっこなんかして」
柔らかく微笑む冬美姉さんは、我が轟家の兄弟姉妹(なんとわたしを入れて5人)の中の第一子長女だ。
小さい頃にお母さんが家を離れて以来、わたしにとっては、冬美姉さんが母親の代わりみたいなもんだった。
おっとりしていて、側にいるとほっとする優しさがある。相談事があるなら、まずは冬美姉さんにするべきだろう。
わたしは人差し指と中指で前髪を挟んで見せた。
「昨日、切りすぎちゃったの、ほら」
「そうかしら?」
「おかしくない?まゆげまで見えちゃいそう」
「平気よ。そのくらいの方が、かえって明るく見えて可愛いわ」
冬美姉さんの言葉には説得力がある。
正しいことは正しい、間違ったことは間違っていると言う人だ。冬美姉さんが平気だと言うのだから、きっとそこまで変じゃないんだろう。
心配事が解決すると、気持ちが急に軽くなる。口まで一緒に軽くなる。
「姉さん聞いて、この前ね、隣のクラスの男子……あんまり話したことない奴だったんだけど、『連絡先教えて』って言われてさ、」
鏡の中の自分と向き合う。