第5章 お兄ちゃんオーバーケア①(轟 焦凍)
▼ 朝
小鳥のさえずる声で、夢から覚めた。
まだ眠いまぶたを開けると、兄が隣で寝ていた。
わたしに寄り添うようにして。
「起きたか、なまえ」
目が合いました。
「おはよう、焦凍兄さん」
月曜日の朝。
「今すぐ出てって」この台詞を吐けた自分に拍手。
「なまえやめろ、押すな、狭いんだから」
「ここはわたしのベッドです、降りて!」
「断る」
「ちょっ……離れて。一人分のスペースに二人はちょっと入れないって藤くんも歌ってたでしょ」
「つんくはお前も夢もシングルベッドで抱いてたけどな」
「うるさいわ!」
力くらべで兄に勝てたためしはない。それでも柔らかい毛布の下で、絡みついてくる二本の腕を剥がそうともがく。
月曜日の朝。
ヒーロー科で鍛錬している人間にとっては、寝起きの妹を抱き込むのなんて文字通り朝飯前のことなんだろう。笑っちゃうほどに歯が立たなかった。
「今日もいい匂いだな」
「天気の話するみたいに、人のパジャマを嗅ぐのはやめよう?」
ものを申すと、ベッドのスプリングが軋む。
▲ 月曜日の朝