第3章 I'll bet she will - - - (上鳴電気)
『俺も学校の最寄り駅同じでさ、ほら、駅の裏のあの……なんかデカい広場あんじゃん。あそこのベンチで待ち合わせとかどう?』
「へ?」
『なんならそのままお茶しちゃう?』
『おいおい、ナンパか~?』
切島、と呼ばれた声が奥から茶化した。
『さすがというか、バカな奴』
『コイツ全ての出会いをムダにしないよな』
『むしろ尊敬する』
テンポよく男子の台詞が連なった。あれ、さっきより増えてる、と私はぼんやり考える。
『で?』
ギャラリーなど気にもとめない彼は話を続けた。『おねーさん、今どこいんの?社会人?』
「違う、高校」
反射的に答えてしまう。年齢を間違えられて、個人情報とか考えるより前に、咄嗟に否定を口にしていた。教室全体をぐるりと見渡して、「学校にいる」と言い直す。
『マジで?どこ高?』
「雄英……」
『ゆうえい!?』
ゆうえい!?と向こうの奥でも驚く声。リレーのようにおうむ返しが繋がって、電話口が一気にどよめきたつのが音で分かった。
驚きすぎだろ、と私は呆れる。でも、そのリアクションには慣れていた。今までの経験が正しいのなら、すかさず謙遜を並べれば角は立たないはずだった。
「そんな、大したことじゃないよ。私はふつ……」
『俺も!!!』
「え?」
『俺も、雄英!』
「え!?」と私は大声を出してしまった。周囲を気にして、「ほ、本当に?」と声のボリュームを下げる。
こんなアホみたいなノリの男子が雄英にいるのか、と絶句した。
『なんだよー、超近いじゃんかよー。学年は?』
「い、1年」
『加えてタメかよー』
『あ、これ運命じゃね?』と閃いたかのように彼が付け足した。あまりの安っぽさに苦笑してしまう。