第2章 Kaboooooom!!!(爆豪勝己)
「私の個性は、計量です。」
なまえは手近な机の上にあったシャープペンシルを手に取った。「ナノグラム単位まで、持てるものなら正確に数値で把握できます。爆豪くんのシャーペンは、15.634005845g」
「地味だな」
「ええ、地味です。私はヒーロー科の皆さんと違って、戦闘はしませんから」と首をすくめる。
「代わりに、火薬の管理には役立ちます。けれどダイナマイト、手榴弾、花火、爆竹……どれを試してみてもダメなのです。私の欲しいインパクトがない。良くも悪くも、緻密に計算してしまう。つまり上品なんです。爆発が」
爆発に上品も何もないだろう、と緑谷は思った。実際、野次馬のうちの誰か(おそらく上鳴)は声に出して突っ込んでいた。けれど爆豪が何も言い返さないのは、どこか理解できる部分があったからなのかもしれない。
「あぁ、私はもっと大きな爆発を望んでいます」
夢見るように、芝居がかったように、なまえは胸に手を当てた。「体育祭で爆豪くんの個性を見たとき、全身が震えました。荒々しく、規模が大きく、それでも細やかに調整されている。あぁなんて素晴らしい!一体どんなメカニズムで?私に再現することは可能?もうあの日から、寝ても覚めても、アナタで頭がいっぱいなんです。だから……」
お願いします!と頭を下げる。「爆豪くん!私にアナタの汗を採取させてください!できれば手のひら以外も!全身!くまなく!ダメならせめて舐めさせて!匂いだけでも!!!」
「……!」
爆豪の顔が静かにゆっくりと歪んでいく。おそらく身の危険を感じたのだろう。「言いたいことはそれだけか……?」と拳をわなわなと震わせていた。
「人に時間割かせて散々喋り倒した結果がそれか?変態発言か?変態なのか?意味わかんねーよ帰れよつーか俺が帰る」
「あぁ待ってください!ですから先ほども説明しました通り、私は爆発の…」
「うるせーよ知るか!」
「拒否ですか?」
「ブッ拒否!」
「そこをなんとか!」
「爆豪さァん、私からもお願いします!」離れた場所から発目が両手でメガホンを作るが、「っつーかお前も誰だよ!」と突っぱねられ、「今更ですか」と苦笑する。