第2章 Kaboooooom!!!(爆豪勝己)
「どうですか、なまえちゃん」
「ごつごつしてる。皮が厚いわ」
夢中で報告をする口調は、先ほどとはまるで別人。「発現は4歳頃かしら。10年以上も爆破に耐えていると、こんな風に変化するのね。爆豪くんの個性っていうのは、」徐々に増していく興奮を抑えようともせず、なまえは目の前の人物に詰め寄った。「何を起爆剤にしているの?空気中の成分から?それとも何か外部から物質を取り込んで……」
「いや、汗だ」
「汗!!!」
神から啓示を受け取った人間はこんな反応をとるかもしれない、と緑谷はなまえを見て考えた。信じられない、といった感じで目を見開いて、執拗に凝視するその姿。ここが英語圏だったら、まさしくOh,My God!!だろうな、と。
「詳しくは俺もわかんねーけど」
他人にとことん疎い爆豪は、かったるそうに首を回した。ポキポキと呑気な音がなる。「ニトロのようなものが出てんだってよ。知らねーけど」
「ニトログリセリンね!!?」
対してなまえは噛み付かんばかりだ。もはや周囲など目に入らず、取り憑かれたように独り言を床に並べる。「正式には少し違う物質かもしれないわ。汗ということは血液が特殊なのかしら、でも今まで流血による爆発は確認できなかった。じゃあ汗腺に何か秘密が?それとも体細胞に?発汗の条件による成分比の違い?あああもう情報が足りないわ爆豪くん!!!!」
呆気にとられて静まり返った教室内で、なまえは途方に暮れたように呟いた。「欲しい」
「あ?」
「爆豪くんの汗が欲しい」
「は!?」
「やですダメです」
お願いします、とふるふると首を横に振る。「私の芸術には、アナタが必要不可欠なんです」
「芸術?」
「話が全く見えないが」
一部始終を見ていた飯田が、部外者となった発目に説明を求めた。フッフッフ、と発目は不敵な笑いを零す。
「彼女の趣味ですよ」
「は」
「フェチです」なぜか自慢気に。「フェティシズムです」
「いや、」
「なまえちゃんは、爆発という現象が好きなんです」