第1章 目覚めた魔女
ボロボロ家の中は驚くものであった。あきらかに外と間取りが違い、外の外見からは想像できないほど広かった。だが物は散乱し、家中変な落書きがたくさんあり、掃除などしていないようだった。
「………誰だ」
その部屋の中で憔悴しきった痩せこけた男。敵意むき出しで老人を見る。その手には木の棒が握られている。
「随分痩せたの、アドゥー。いや、今はリドルかの?」
だが、老人は敵意など向けられていないかのように穏やかな口調で言った。
「……………アルバスか?」
男は少し驚いた表情で老人を見る。
「久しいの。お主が行方知らずとなってはや20数年じゃ。世界最高峰の魔法使いといわれたお主がまさかこんな所におったとは驚きじゃよ。」
「私は既に世間では死んだ身。今更何の用だ」
「昔の友人に会いに来るのに用などいるのかの?」
笑顔で答える老人。
「………アルバス。頼むから何も検索せず帰ってくれ。お前を傷つけたくない。」
「………アドゥー。わしはお主の力になりたいんじゃ。ここにいるんじゃろ?」
「………なんの話かさっぱりだな。」
男は顔を背ける。老人はため息をつき言葉を続ける。
「この落書きは古い魔法のものじゃ。特殊な魔法。その影響でお主は歳をとっておらぬのだろう。」
「……………」
「何故お主がこんなことをしてるのかはだいたい想像はつく。じゃが、こんなことしてなんになる?お主が死ぬまでするのか?あの子を縛り付けてなんになる?」
「こうするより方法がなかったんだ!あの子は……あの子は……呪われた子だ。生まれたときからな。」
「だからこのまま自由なくして死ねとでもいうのか?お主はあの子の幸せを祈っておるのに、当のお主があの子の幸せを奪っておることになぜ気づかなんだ!!あの子よりも先にこの世に生を受けた兄は進むべき道を誤ってはしまったが、自分の人生を自分の足で決めて歩いた。だが、あの子は一度もそれをしてはおらぬ!」
「じゃあお前はどうしろというのだ!外に出してもしそのことがディスイーターのやつらに知れ渡れば、絶対にあの子を次の闇の帝王にするだろう。そうでなくても、自分の唯一の肉親のことは嫌でも知ってしまう。それはあの子を傷つけることになる。私は………あの子にそんな思いをして欲しくないのだ。」
涙を落としながら、自分の思いを話す男に老人は優しく語りかける。