第1章 目覚めた魔女
トントン。トントン。
青いマントに身を包むその男、もとい老人が平凡なその村の中で一番みすぼらしいであろう壊れかけた家の扉を叩いた。
その老人は長いヒゲに高い鼻、高い身長の持ち主でただでさえそれだけでも目立つのにさらにそれに負けないほど派手なマントに身を包んでいた。村の人々の注目の的にならないわけが無い。それに変わり者とされているリドルの家の扉を叩いているとなればなおさらだ。
「おい、あんた。リドルの野郎に何の用だ?身内か何かかい?」
好奇心に負けた村人が話しかける。
「ここの家の者は留守かの」
老人はその質問に答えずやんわりと村人に聞いた。
「さあね。あいつは変わりもんで有名だからね。夜にならないと家から出てきやしない。ここだけの話、誘拐した娘を人形の一部にしてるって噂もあるんだよ。」
別の村人が言う。
「……人形?」
「ああ。私の息子があいつの家の奥に人間の等身大ほどの大きさの人形を見たっていってたんだよ。人間とは思えない美しさを持った人形だって。やつにしたってそうさ。ずっと独り言をブツブツ行ってるし。家の中には変なもんがたくさんあるし。それにあの目。ありゃ人を殺したことのある目だ。」
老人は少し考え、そしてまた扉を叩いた。だが、やはり家の中から音沙汰はない。老人がドアノブを回してなかに入ろうとすると、
「やめときなって。あいつ昼間は鍵かけてでてこないんだって。」
と笑いながら止める村人たち。だが、老人は笑ってドアを開ける。
「すまんが勝手にお邪魔させてもらおうかの。」
村人が驚くなか平然と家の中に入っていった。