第3章 兄弟
「まさか、奥方様が狙われるとは」
恒興ちゃんの言葉にこくりと頷く
帰蝶さんが居なくなったことに気付いてすぐに私達はあたりを探した
少し行ったところには彼女が羽織っていた着物
私が目を離したから…
唇を噛み締めているとサブローが私の肩に帰蝶さんの着物を掛けた
「持ってて」
それだけを言えば馬に飛び乗る彼
「え、殿…?」
中途半端に伸ばした手は空を切る
「なりませぬ!一度城へ」
恒興ちゃんは私が掴めなかった殿の腰あたりを簡単に掴んで止めようとしている
でもサブローは探しに行く気満々らしい
暫しの攻防
そろそろ止めないとダメ、かな
今度こそと伸ばした手が再度空を切った
二人は争いを止めて上を見ている
上とは言っても真上ではなく…視線の先を追えば丁度身を隠そうとしている人影を見た
あれ…
「分かった。恒ちゃん。一度城へ戻ろう」
二人は目を合わせて頷く
自然の流れのように恒興ちゃんに手を取られかれの後ろへ跨った