第3章 兄弟
恒興ちゃんの殿への態度は変化した
それはもう、少し心配になるくらいに
「恒興ちゃんさぁ」
「ん?」
振り返る彼の表情は穏やかだ
少し前なら殿がいないなんて事になったらそれはもう、眉間にシワを寄せていたというのに
あの台詞にはそんなにも効力があるのか
“信長は、天下をとる男だぞ。”
そう言った彼の後ろ姿は私が尊敬する信長そのものに見えて
暫く固まってしまったのを覚えている
そんな事を思い出していれば恒興ちゃんは何だと言うように首を傾げる
ああ、そうだった
私が話し掛けたんだ
「いや、殿が…本当に天下取れるって、思ってる?」
今思えばこの台詞、その場で叩き斬られても可笑しくないようなものだった
それを恒興ちゃんは苦笑で返す
「殿がそう申したのだ」
それで信ずるのには十分
そう続く気がして思わず笑ってしまった
恒興ちゃん、もうサブローの事大好きじゃん