第12章 -初恋-(二口堅治)
-すみれside-
堅治くんの
「バカだなー」ということばに
わたしがまた固まっていると、
「帰るぞ!」
そう言った堅治くんは、
小さい頃みたいにわたしの手を取り、
グングン歩き出した。
「堅治くん⁈」
え⁈な…なんで手…繋いでるの⁈
しばらく歩くと、
堅治くんは手をはなしてくれた。
繋いでくれていた手は、
まだ堅治くんの温もりが残っていた。
「あ…あの…」
「なんだよ?」
うぅ…っ。やっぱりちょっと怖い。
「あの…もしかして…
わたしのこと待ってたの?」
怖いけど、勇気を出して聞いてみた。
「…あぁ。」
堅治くんは少し先を歩いて、
わたしのほうを見てくれなかったけど、
頷いてくれた。
トクン…。
堅治くんのことばに胸が高鳴る。
「あ…ハンカチ?昨日の…」
でも、わたしは、堅治くんが、
わたしに会わなければならない
”理由”があったことを思い出した。
また自分に都合のいいように
考えてしまうところだった。
「ちげーよ。」
「え…?」
「あれは今日洗ってもらってる。」
あ…そっか。
昨日の今日で洗濯終わるわけないか。
「でも、じゃあ、なんで…?」
「今日チャリねーだろ?」
「…?うん。」
自転車は今日お母さんが
パンク修理に持っていってくれている。
「だからー‼︎
帰り、この時間…チャリならまだしも、
女1人で歩くの危ねーだろ⁈」
…⁈
それで…待っててくれてたの…?
「あ…ありがとう。」
「…っ⁈別に。
オレも自主練やったら、
だいたいこの時間だし…。」
いつもなら怖く感じる
堅治くんの話し方が、
今はあまり怖くなかった。
「あの…昨日…ありがとう。」
「なにが?」
「自転車…チェーン直してくれて。
それに一緒に帰ってくれて…。
昨日…お礼言ってなかったから。」
昨日…気まずくなってしまって、
わたしは逃げるように家に入って、
堅治くんにお礼も言っていなかった。
「いーよ。それくらい。それよりさ…」
…?
堅治くんはわたしの前で立ち止まり、
わたしをジッと見つめた。
「すみれが見てると集中できないとか
迷惑とか…それって何?」