第12章 -初恋-(二口堅治)
-二口side-
昨日のことが頭から離れない。
あんな言い方して、
ますます嫌われてんだろうな。
しかも、すみれが言ってたこと…
なんであんなこと言うんだ⁇
オレは必死であの頃のことを考えていた。
それでも思い当たることがなかった。
ちょっと重い気持ちで家を出る。
「あら?堅治くん!おはよう!」
「…⁈あ…おはようございます。」
「今日も朝練?」
「はい。」
新聞を取りに出てきたようで、
すみれのおばさんに会った。
「あ!昨日すみれのこと
送ってくれたんですって?
自転車のチェーンも
直してくれたんでしょ?
ありがとうね。
今日パンク修理行ってこなきゃ。」
おばさんは自転車を見て言った。
「いえ。あ…じゃあ、オレ…」
「あ、引き止めちゃってごめんね。
いってらっしゃい!」
おばさんに見送られ、
オレは行こうとしたが、
ふと思いついておばさんに聞いてみる。
「おばさん!すみれ、今日も塾?」
「そうよー。だいたいいつも
昨日くらいの時間かしら…」
「ありがとうございます!
いってきます!」
今日パンク修理するってことは、
あいつ、今日自転車ないんじゃん…。
行きはいいとして、
帰りが昨日の時間てことは…
危ねーじゃんか。
すみれのことが気になって、
朝練も授業も午後の部活も
集中できなかった。
オレは昨日より
自主練を早めに切り上げ、
急いで帰って、
地元の駅前ですみれを待っていたが、
昨日の時間を過ぎても
すみれは来なかった。
今日は自転車がないし、
もう帰ったのかもしれない。
そう思って少し諦めかけた時、
すみれが改札から出てきた。
…‼︎
でも、すみれはオレに気付かず、
自転車置き場に向かった。
…チャリあるのか?
そう思って見ていると、
すみれは急に
クルリと回れ右をして、
こっちに向かってきた。
オレに気付いて、
すみれはビックリして立ち止まる。
「…⁉︎」
「今、自転車置き場行こうとしたろ?
バカだなー。」
すみれがビビるのはわかっていた。
でも、オレは敢えていつものように
すみれに話し掛けた。
「帰るぞ!」