第12章 -初恋-(二口堅治)
-すみれside-
ちょっとぶっきらぼうだったけど…
堅治くんは車道側を歩いてくれた。
ビックリしたけど、
嬉しい…と、素直に思った。
だから、「ありがとう」と言えたのに…
「別に…。
おまえ、運動神経ねーし、
車にひかれちゃ困るからなー。」
思わずビクッとしてしまう。
素直にお礼を言っても…
やっぱり意地悪なコトしか返ってこない。
これ以上何か話したら、
また意地悪言われちゃうのかな…。
そう思うとつい下を向いてしまう。
でも、気まずい。何か…話さなきゃ。
「バレー…頑張ってるんだってね。」
咄嗟に出た話題は、
堅治くんがしているバレーの話だった。
堅治くんといえば、バレーボール。
堅治くんは意地悪だったけど、
堅治くんがバレーをしているのを
見るのは、わたしは大好きだった。
あの時までは…。
*--------
『でも、檜原ってさー。
絶対オマエのコト好きだよな⁈』
中3の夏の放課後…。
帰り際に隣の教室の前を通ると、
自分の名前を言う声が聞こえた。
思わず立ち止まってしまう。
”オマエのコト好きだよな⁈”
そう言われていた相手は、
堅治くんだった。
どうしてバレてるの⁈
『はぁ⁈』
『だって、檜原って、絶対
二口の出る試合の応援来るじゃん?』
『たしかにー!二口愛されてんなー。』
廊下で立ち聞きしていたわたしは、
真っ赤になっていた。
『アホか⁉︎んなわけあるかよ。
だいたい、毎回試合観に来られたら、
集中できねーっつぅの!それに、
オレがあいつにキツいの知らない?』
…っ⁈
『あー。たしかに、オマエ、
檜原にだけやたらキツいよなー。』
迷惑…だったんだ…。
それに…意地悪言うのも…
本音だったんだ…。
幼なじみだし…どこか甘えがあったり…
愛情の裏返しなのかも…って…
自分の都合のいいように勘違いしてた。
わたし…そんなに嫌われてたんだ…。
気づいたら、涙が溢れてきて…
わたしはその場から離れた。
--------*
堅治くんの中学最後の試合は、
わたしは観に行かなかった。
「ゴメンね。バレーの話…。
お母さんがこの間
おばさんに聞いたみたいで…。」
慌ててわたしは言い訳をした。