第12章 -初恋-(二口堅治)
-二口side-
部活帰り…青根と別れ、
1人で歩いていると、
チャリの前でしゃがみこんで
ガチャガチャやってる奴がいた。
どんくさ〜。
いつもなら、そのまま
見て見ぬふりして過ぎ去るが、
今日はそうもいかなかった。
そこにいたのは、
オレのこと大っ嫌いな、
オレの初恋の人…
幼なじみの檜原すみれだったからだ。
すみれに会うの…いつぶりだ…?
家は隣なのに、滅多に会わない。
気がついたら、オレと話すとき、
すみれはいつもビクビクしていた。
それを思い出すと、
話しかけるのを躊躇しそうになるが、
困ってるみたいだし、何より
すみれと話したいという衝動に
勝てなかった。
「…何やってんだよ?」
オレの緊張を悟られないように、
あくまでさりげなく話し掛ける。
「えっ⁈」
しゃがみこんだまま
すみれはオレを見上げてきた。
…っ‼︎
少し薄暗い中、
外灯に照らされた
久しぶりに見るあいつの顔は、
オレの記憶より
少し大人っぽくなっていた。
「あ…あの…えっと…」
すみれはオレを認識すると、
ビクッとして、テンパっている。
相変わらず嫌われてんなー。
すみれの反応に
少しばかり心が痛むが、
それに気づかないふりをして、
すみれの隣にしゃがみこむ。
「チェーン外れたのか?」
「えっ⁈あ…うん。
あと…たぶんパンク…」
「はぁ⁈マジかよ⁈
ったく…どんくせーなー。」
「…っ⁈」
やべ…。
すみれがビクッとしたのがわかった。
ガチャガチャ…
「…⁈あの…堅治くん⁇」
「あ?なんだよ?」
「なに…してるの?」
「なにって…見ればわかんだろ?
チェーン直したら、
とりあえずチャリ引けるだろ?」
オレが手を貸すのが
そんなにおかしいのか?
すみれはビックリしたように
目を真ん丸くしてオレを見ていた。
…っ‼︎
オレは恥ずかしくて慌てて下を向き、
チェーンをいじった…が、
「おい‼︎おまえ、
少し離れて立ってろよ!」
「え…?」
「いいから‼︎」
オレはすみれを
オレの少し後ろに立たせた。
隣にしゃがまれてると…
太ももやべぇんだよ…。