第11章 -恋心-(及川徹)[後編]
「試合観に来たんだろー?
特等席で見せてやるからさー。」
いや…なんていうか…
「これでベンチにいる
理由できたからよかったじゃん。」
花にそう言われ…諦めた。
わたしがベンチに行くと、
ちょうど入畑監督がきた。
「あ!お疲れさまです!」
「檜原か。また溝口くんに捕まったな(笑)
よろしくな。」
よくわかっていらっしゃる…。
「はーい。」
まぁ、たしかに試合観るには
いい席だし…。
及川への黄色い声援を
真横で聞くよりはマシかなぁ。
いろんな理由で
理不尽な?溝口コーチの
横暴を納得させ、
わたしはベンチに入り、
スコアブックを手に取った。
そうこうしてるうちに
ついに烏野との試合が始まった。
第1セットの烏野の印象は…
チグハグというかハチャメチャで…
でも、”王様”と呼ばれていた
影山くんがスゴイのはわかった。
サーブとか…及川と似てる。
そして、小っちゃいMBのコが、
影山くんの後頭部に
サーブを炸裂させ…
第1セットはウチが獲った。
い…痛そうだったな…。
でも、第2セットからは
烏野の空気が変わった。
そして、あの小っちゃいMBのコの
よくわからない速攻…。
あ…あれ何⁈
スコアを書く手が止まってしまった。
でも、その速攻を何回か見て、
本当にスゴイのは
セッターのコだと感じた。
あんなに正確にトスを…。
凹ましたい
”生意気なクソ可愛い後輩”
と言った及川の気持ちが、
少しだけわかる気がした。
そして、金田一が言っていた
”王様”と呼ばれた意味も…。
でも、烏野では
”王様”っぽくなかった気がしたな。
第2セットは烏野に獲られてしまった。