第11章 -恋心-(及川徹)[後編]
彼女は黙ったままだったが、
やっと口を開いた。
「わたし…わたし…
彼氏のふりをお願いしたけど…
及川くんのコト…好き…
好きになっちゃっ…」
彼女はポロポロ涙を流しながら、
オレに告白してくれた。
「…ありがとう。でも…
オレの気持ちは変わらないよ。」
「なんで⁈だって…わたし…」
彼女は必死にオレを引き止めるように
オレの腕を掴んだ。
「ゴメンね。彼氏のふりとか、
軽率なコトした
オレのせいかもしれないけど…
オレの気持ちは変わらないよ。」
オレは同じコトをもう1回言った。
「この写真…バラまくって言っても?
バラまき方によっては、
檜原さんが略奪した…
って思われるわよね?」
あれれ?
涙流して告白してるから、
いいコだと思ったのに。
及川さんもまだまだ見る目ないなー。
「うーん?
まぁ、そんなよく撮れた写真、
オレとしては?
すみれちゃんとの
ラブラブアピールになるから、
ぜんぜん困らないけど☆」
オレはそこで彼女を睨みつけた。
「…っ⁈」
「そんなコトするなら、
コレも…バラまくよ?」
オレは彼女にスマホを見せた。
「それ…っ⁉︎」
オレが見せたのは、
彼女があの写真を
まさに黒板に貼ろうとしている
写メだった。
さっき声掛ける前に撮ってたんだよね♪
及川さん、頭いいっ♪
「そっちの写真バラまく分には
まったく問題ないけど、
こっちの写真バラまかれると、
キミのほうが困るんじゃない?」
「…っ⁈わ…わかったわよ。」
彼女はやっと諦めたようだった。
オレはそのまま教室を出ようとしたが、
出る前に一言…
「あ!すみれちゃんに
逆恨みするのはお門違いだからね?
すみれちゃんに何かしようとしても、
これバラまくし…」
オレはもう1度彼女を睨みつける。
「もっとひどいコトするかも。」
オレはそれ以上彼女を見ずに、
教室を出た。
ま、そんなことするつもりは
ないんだけどね。
でも、すみれちゃんはオレが守る。
ひとまず厄介ごとの一つは片付いたし、
あとは…すみれちゃんの
誤解を解かなきゃ。
彼女には少し申し訳ないけど、
すみれちゃんには、
フラれて辛い…みたいな演技…
しちゃったしなぁ。