第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
乾杯をしてしまえば、
いろんな話題が次から次へと出てきて、
京治とのコトを聞く人はいなかった。
わたしも今日は全然赤くならないし、
なんだか調子がいい気がする。
「すみれ、コレ好きそうじゃない?いる?」
「うん!あ、美味しい♪」
京治ともだんだん
普通に話せるようになってきた。
別れてから何年も経っているのに
京治はわたしの好みを覚えていてくれて、
急に昔に戻ったみたいで懐かしい。
「ねぇねぇ、それで赤葦と檜原さんて
やっぱり付き合ってたの?」
でも、その質問は突然だった。
皆だいぶお酒が入ってきた頃、
恋バナとかしていたわけでもないのに、
なんの前触れもなく、
白福さんに聞かれてしまった。
「わたしも聞きたいかもー!」
雀田さんまで興味津々だけど、
生憎今日のわたしは、全然酔っていないので、
うまくかわせない…どうすれば…
「付き合ってましたよ。」
「京治⁈…っ⁈」
驚いたのは、
京治があまりにもすんなり答えたコトと…
テーブルの下でわたしの手を握ってきたから。
思わず京治の方を見てしまう。
「やっぱりー♡」
「マジでー⁈」
逆側で違う話をしていた月島さんたちまで、
赤葦さんの声に反応してこちらを見ていた。
もちろん…岩泉さんも…
「あ…でも、学生の時の話で…
もう何年も前なので…」
わたしが慌てて取り繕うとして、
同時に京治の手をはなしたのに、
はなしてもはなしても、
京治はまたわたしの手を握ってくる。
なんで…?
「なんで別れちゃったの?」
「2人お似合いなのにもったいないなー。」
「それは…」
「オレが社会人になって余裕がなくなって…
すれ違いが多くなっちゃったんです。
それだけです。」
「京治⁈」
すれ違いが多くなったのはほんとだけど、
それが耐えられなかったのは
わたしの方なのに…
「檜原ちゃん、今彼氏いないんだろ?
あかーしも今フリーだし、ヨリ戻しちゃえば?」
「そういう木兎さんは彼女どうしたんですか?
最近話聞きませんよね?」
「…⁈聞くな…あかーし…いや、聞いてくれ‼︎」
京治がうまく話をそらしてくれ、
皆で木兎さんの話を聞くコトに…
話がそれてホッとする。
今日はそんなんばっかだなぁ…