第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
#09
-岩泉side-
「すみれ、鈍ってないな。」
「そんなことないよ。
明日の筋肉痛が怖い…。」
「…明日くるのか?」
「あ!ひどーい‼︎くるよ……たぶん。」
「ははっ…変わってないな。」
今日は檜原も練習に来るから、
早く行きたかったのに、
急な打ち合わせが入って遅くなってしまい、
はやる気持ちを押さえて、
やっとたどり着いた体育館で、
オレの目に飛び込んできたのは、
楽しそうに話している檜原と…赤葦だった。
赤葦…?
あいつ…どっちかっつーと
人見知りするタイプなのに…
つぅか、赤葦も自分から積極的に
女と話すタイプでもない。
「意外だろ?」
「…⁈」
ボーッと檜原と赤葦を見ていたら、
いつのまにか隣に黒尾が来ていた。
やべぇ…まったく気付いてなかった…
「お疲れ。打ち合わせ大丈夫だったのか?」
「ん…あぁ。なんとかな。
つか、なんだよ?"意外"って…」
「やっぱ気になるんだ?」
ニヤニヤしながらオレを見下ろす黒尾…
こいつのこの感じ…クソ川とダブって仕方ない。
オレより背が高いから、
見下ろす感じまでクソ川と似ている。
「オマエが振ってきたんだろーが。」
「大学ん時のサークルの先輩なんだとー。」
オレが少し睨むと黒尾はあっさり話し始めた。
こういう所はクソ川と少しちげぇな。
「大学って…檜原、女子大だろ?」
「へぇ…よく知ってんね?」
「ん…あぁ…
新入社員ん時に一緒だったからな。」
「ま、そういうコトにしといてやるよ。」
「それ以外に何があるっつーんだよ?」
今日はやたら絡んでくるな…
「別に何も言ってないじゃん♪
ちなみにインカレであかーしの大学のサークルに
檜原が入ってきたんだと。」
「…」
「おーい‼︎あ‼︎岩泉じゃーん‼︎
なぁなぁ‼︎3対3やろーぜ‼︎
アタックは女のコな?」
…助かった。
これ以上、黒尾に何て答えるのが
正解なのかわかんねぇ…
黒尾に檜原の話を振られるたびに
いちいちモヤモヤする…。
4月の飲み会の時に
檜原を送った時に嘘をついたからなのか、
それともオレがまた…
檜原を意識しているからなのか…