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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


「でもな、リベロじゃなくてもレシーブは
全員がするだろ?
レシーブあがんなきゃ、始まんねーし。
バレーが一段楽しくなったのは、
相手の完璧な一発を拾う
レシーブの快感を知ったからだ。」


バレーの話だと…
岩泉さんてこんなに饒舌になるんだ…
こんな風にちゃんと話したことなかったな…


「わかります‼︎
わたしもリベロやってから
それがすごい楽しかったです‼︎」


「だろ?」


ニカッと笑う岩泉さんの笑顔…


…また見れた。


思わず赤くなってしまいそうな
自分の表情を引き締めて、話を続ける。


「岩泉さんもリベロやればいいのに。
なんでリベロやらないんですか?」


「なんで…って…おまえなぁ。」


「そんな呆れた顔しなくてもーー。」


「おまえはすぐ"なんで"って聞くよな。」


いつのまにか食べ終わった岩泉さんは、
お茶を飲みながらジッとわたしを見てきた。


「…そうですか?」


「でも…ほんとに知りたいコトは…
"なんで"って、聞かねぇよな。」


「え…?」


岩泉さんの真剣な視線が突き刺さる。


人のまばらなお昼休み後の社食の窓際には、
誰もいなくて、
わたしたちの会話を聞いている人はいない。


こんな時まで周りを気にする自分に
嫌気がさすが、気持ちは止められない。


「聞きたいコト…あるんじゃねぇの?」



思わず岩泉さんから目を逸らしてしまう。



「…なんてな。オレ、そろそろ行くわ。」


岩泉さんは表情を和らげ、席を立った。


なんでウチで抱き締めてくれたの?
なんで女物のスカーフ持ってたの?
なんで知らない女とキスしてたの?


聞きたいけど…聞きたくない…。


あの時わたしが見た
岩泉さんにキスをした人が
スカーフの持ち主のカオリなのかどうかも
わたしは何も聞いていない。


正確には、岩泉さんは、
わたしと話そうとしたけど、
わたしが岩泉さんの話を一切聞かなかった。


お願いしたのは一つだけ。


「別れて…元の上司と部下に戻ってください。」


つまり、何もなかったコトにするというコト…


ほんとのコトを聞いて
これ以上傷つきたくなかった。


だから…この間のコトも聞きたいけど、
聞きたくない。


岩泉さんと話せなくなるくらいなら、
何も知らなくていい。

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