第9章 -期待-(花巻貴大)**
本当はオレから離れたのに、
いかにも置いてかれたかのように
すみれに言ってから、
オレは気になってたコトを聞いた。
「つか、お前は何してたの?」
スーパーボールの出店を
見てた気がしたけど…
「あ…えっと…」
すみれは答えるのを
迷っているようだったので、
オレは先に言ってみるコトにした。
「アレ?好きなの?」
オレがスーパーボールすくいを
指差して言うと、
すみれはなんでわかったのか?と、
不思議そうにしながらも話してくれた。
「はい。小さい頃、
おじいちゃんがよくやってくれて…
わたしがやるといつも取れないのに、
おじいちゃんは
いつもたくさん取ってくれるんです。
キラキラして宝石みたいで…」
じーちゃん?
そういえば…去年の今頃、
あいつ部活中に早退したとき…
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『檜原!』
練習中、”檜原”という呼びかけに、
思わずオレも監督のほうを見た。
すみれを呼んだのは監督だったけど、
監督の横にはすみれの担任もいた。
すみれの担任が何か言うと、
すみれは一瞬動揺して、
目に涙をため、泣くのを堪えていて、
監督に頭を下げて体育館を出た。
少しして休憩時間になったので、
オレも体育館の外に出ると、
ジャージのまま帰ろうとしてる
すみれを見つけた。
『すみれっ!』
『花巻先輩…?』
1人になってから泣いたのか、
目が少し赤くなっていた。
『…⁈どうしたんだよ?』
『あ…おじ…祖父が…』
また泣くのを堪えて、
笑顔を作ろうとするすみれを見て、
オレはなんとなく状況を理解した。
『わりぃ。もう言うな。』
『え…?』
『ムリすんなよ?
泣きたい時は泣いとけ?
オレでよかったら話聞くし、
オレの前でなら泣いてもいいから。』
オレはすみれの頭をポンポンとした。
すみれを少しでも元気づけたかった。
『なっ!』
数日後、部活に復帰したすみれは、
いつも通りのすみれに戻っていた。
それ以来、前よりも
すみれと話すようになった。
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