第9章 -期待-(花巻貴大)**
青城バレー部皆で夏祭り。
皆浴衣で集合。
いつもと雰囲気がちがうけど、
オレのお目当ては1人…。
「すみれ、かわいーじゃーん♪」
「ありがとうございまーす♪」
普通の女のコならイチコロの
及川スマイルを慣れたようにかわす
檜原すみれだ。
すみれは淡い紫の浴衣を着て、
髪も編み込みしてアップにしていて、
たしかに可愛かった。
「よーし!皆行くよー!」
及川の声で皆で一斉に動き出した。
「たこ焼き食べたいねー♪」
すみれは他のマネたちと
楽しそうに話しながら歩いていた。
オレはその少し後ろを
松と話しながら歩いていた。
…?
暫く歩くと、すみれは1つの
出店の前で立ち止まった。
「すみれー?行くよー?」
「あ…うん!」
他のマネに呼ばれても、
すみれは、
その出店に後ろ髪を引かれるように
ゆっくり歩いていた。
「あ!あそこのベビーカステラ!
クリーム入りなんだぜ!
オレ、ちょっと買ってくるわ♪」
オレは咄嗟に松に言った。
「あぁ。先行くぞ?」
「おう!後で追っかけるわ。」
クリーム入りのベビーカステラは
ウソではない。
オレはすみれを視界に入れ、
見失わないようにしながら、
急いでベビーカステラを買って、
すみれの元へ向かった。
「どぉしよう…コレって迷子⁈」
「奇遇だなー♪オレもー。」
偶然ではないのに、
オレはあたかも
自分もはぐれたかのように
すみれの横に行った。
「きゃあっ。」
「おいっ!”きゃあっ”ってなんだよ?
失礼だなー。」
「花巻先輩っ⁈」
すみれはオバケでも見るかのように
驚いていた。
「花巻先輩、どうして…?」
そりゃ、聞くよな。
「ココの祭りさ、
毎年クリーム入った
ベビーカステラ売ってんの♪
知ってる?」
オレは用意していた答えを
スラスラと言って、すみれに
ベビーカステラを1つ渡した。
「美味しいっ!」
すみれはニッコリして、
ベビーカステラを食べていた。
やっぱ可愛いな。
「だろ?せっかく見つけたから、
買ってくるっつったのに、
あいつら、置いてくんだもんなー。
ったく…勝手だよな?」