第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
#06
-黒尾side-
はぁ…ダリぃ…
GW明け…気持ちはまだ休みモードなのに、
体は勝手に動いて、気がついたら、
いつものホーム、いつもの場所に
並んでいる自分がいる。
しかも、休みモードのはずなのに、
いつもより15分も早く出ちまった。
年かねぇ…。
余裕もあったから、
満員のギュウギュウの電車には乗らず、
一本見送り、一番前で次の電車を待つ。
休み明けがダルいのに変わりはない。
でも、いつもよりどこか気持ちが明るいのは、
心機一転新しい部署になったから…
とでも、思っておく…か。
矢継ぎ早に電車は来るが、
次に来た電車もけっこうな人で…
ギリギリ乗れるかと思ったけど、
いったん吐き出された人たちが、
またギュウギュウの車内に
入っていったのを見て、
もう一本遅らせるコトを決めた。
結局いつもどーりになるんじゃねーの…
「どけっ‼︎」
「きゃっ…」
オレのため息と同時に、
発車音と男の怒鳴り声と女の叫び声…
は…⁈
ギュウギュウの車内に一番最後に乗った女を
駆け込んで来た男がグイッと引き下ろし、
そのままその電車に乗り込んで行った。
そしてその代わりに、周りの人たちと同様、
呆気に取られていたオレの目の前に
引き下ろされた女が飛び込んできた。
「おっと…大丈夫ですか?」
飛び込んできた女を支えたまま、声を掛ける。
電車はその男を乗せて走り出したが、
ホームはかなり騒ついていた。
「すみません…
ありがとうございま…黒尾さん⁈」
「檜原⁈
おまえ、大丈夫か?怪我してねぇ?」
とりあえず、檜原から手を放し、
改めて檜原が怪我をしてないか見回す。
「あ…はい。怪我は全然…
かなりビックリしましたけど…」
「そりゃ、こっちも同じだ。
…ったく。ひでぇヤツだよな…。」
「ほんと!あいつ、ぜーったい地獄に落ちる‼︎」
「…は?」
「あ、、えっと…」
素で憤慨している檜原は、
会社にいる時と違い、少し子どもっぽくて、
なんだか可愛かった。
「ぶひゃひゃっ(笑)おまえ、やっぱり面白ぇな。」
「面白くないですっ‼︎もう…」
「つぅか、おまえ彼氏んちから来たの?」
彼氏いないって前に言ってたけど、
彼氏…できたのか…