第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
自分の発言のせいで、
結局岩泉さんとよく行ったお店に
行くコトになってしまった。
まぁ、美味しいからいいんだけど…。
目の前に座っている黒尾さんを見ると、
思いの外、真剣に選んでいる。
その姿が、普段の黒尾さんとは、
まったく違って、
ちょっと大きな子どもみたいで…
どれが本当の黒尾さんかわからない。
真面目だったり
からかってきたり
子どもっぽかったり…
でも、第一印象がちょっと苦手な黒尾さんを
なんだかんだ憎めないのは、
なんでだろう…
「ご注文決まったアルか?」
黒尾さんのコトばかり考えていて、
全然メニュー見てなかった…
テーブルの横に来た店員さんの声に、
ハッとして顔をあげる。
あれ…?この人…それにこの喋り方…‼︎
この人…前からよくいたオバちゃんだ。
この喋り方が面白くて、
岩泉さんとよく笑ったっけ…
「あれ?貴女、前来たことアルね!
また来てくれたのー?ウレシイね♪」
「…っ⁈あ…はい…」
「あれ?旦那違うアルね。別れたのか?」
「ちが…っ‼︎わたし、結婚してないですっ!」
「そうだったアルかー。お似合いだったのに。」
「ちゅ…注文いいですか⁈」
これ以上余計なコトを言われないように、
わたしは慌てて注文をした。
「へぇ…彼氏と来た店だったんだ?」
オバちゃんが行ってしまうと、
黒尾さんがニヤニヤしながら聞いてきた。
…やっぱり苦手だ…。
「別に彼氏だったわけじゃ…」
「ふぅん…」
黒尾さんはわたしの発言を
鼻から信用していないようだったけど、
"上司"でもあったから、ウソはついてない。
「黒尾さんて…彼女いるんですか?」
わたしばかり聞かれるのもシャクなので、
聞き返してみると、
黒尾さんは、へぇ…と、少し驚いていた。
「…?どうかしましたか?」
そんなに変なコト聞いたつもりないんだけど…
むしろ、よく聞かれるだろうに…
「おまえ、オレに興味あったんだ?」
「…?あの?意味がよくわからないです…」
「いや、おまえ、オレに興味なさそーだからさー。」
「いや、だから、上司に興味持つって、
どういう意味ですか?」