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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


#05
-すみれside-


な…なんだったの……?



バタンと閉まったドアを見つめながら、
身体の力が抜けてしまい、
そのまま玄関に座り込んでしまう。


岩泉さん…今…キ…キスしようと…したよね…⁈


なんで⁈なんで急に…⁈



考えれば考えるほど、わけがわからなくなる。



去年の2月まで…
わたしと岩泉さんは付き合っていた。


でも、上司部下でいた時間のほうが長いし、
岩泉さんは、"付き合ってた"とは
思っていないかもしれないけど…。



入社1年目で岩泉さんの下に配属され、
岩泉さんへの気持ちが、
尊敬から憧れ…恋心に変わるまで、
そう時間はかからなかった。


でも、やっぱり会社の上司だし、
気持ちは伝えずにいたけど、
初めてわたしが担当した案件が採用され、
そのお祝いも兼ねて
二人で飲みに行った日…岩泉さんと結ばれた。


思えば、ちゃんと"付き合おう"とか"好き"とか
そういったことばはなかったのだけど、
仕事を通して
ずっと一緒にいた時間があったから、
最初はさほど気にしなかった。


周りに二人の関係は言わないでおこう…
そう言われた時も、社内恋愛だし、
わたしも弄られるのは苦手なので、
さほど気にしなかった。


付き合い始めた翌年、
岩泉さんの下からは離れたけど、
関係は変わらなかった。


ことばは少なくても、
毎日連絡はくれていたし、
週末はどちらかの家で一緒に過ごした。


でも、"上司部下"という関係から、
一応"恋人"という関係に変わって、
一層感じるようになったのは、
必要以上にあまり話さない岩泉さんが、
時折ボーッとして遠くを見ているコト。


二人でいても、わたしを通して、
わたしじゃない何かを見ているような…


でも、岩泉さんと離れたくなくて、
気付かないフリをした。


岩泉さんの家で、"Kaori"と名前の入った
高級ブランドの女物のスカーフを見つけた時も
気付かないフリをした。



でも、岩泉さんちに行ったとき、
岩泉さんのマンションの前で、
「ハジメ…‼︎会いたかった‼︎」と、
岩泉さんに抱きついてキスをした女性には、
気付かないフリはできなかった。











岩泉さんと付き合って、1年と2ヵ月…






わたしは、岩泉さんとサヨナラをした。


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