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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


「じゃあ…そろそろ帰るな。」


結局、食後のコーヒーまで飲んで、
思わぬかたちで、
檜原と朝のひとときを過ごした。


飯もコーヒーも懐かしい味だった。


もう二度とそんなコトは
できないと思っていたのに…


「ご迷惑お掛けしてしまって、
本当にすみませんでした…」


「だから、気にすんなって。
あ、でも、清水と黒尾には連絡しとけよ?
二人とも心配してたからな。」


「はい。後で連絡しておきます。」


「飯…うまかった。ありがとな。」


「お詫びですから。
岩泉さんこそ、気にしないでください。」


そう…だよな。


「あぁ。次からは飲み過ぎるなよ?」


「はぁい…って、さっきも聞きましたー。」


「何回言っても言い足りないくらいだ。
ちゃんと反省してるのか?」


「してますー‼︎それはほんとに‼︎
でも、さっきも聞いたんだもん(笑)」


檜原がまた懐かしい話し方をするので、
オレはつい檜原の頭に手を伸ばしそうになるが、
慌ててその手を引っ込める。


でも、せっかく
淡い期待を胸に仕舞い込んだのに、


「岩泉さん、ジャケットの襟が…」


靴を履こうと屈んだ瞬間に聞こえた檜原の声…


その声と共に背中に檜原の手が触れ、
檜原が襟元を直してくれているのがわかった。


淡い期待を胸に仕舞い込んだのも束の間、
気持ちよりも先に身体が動いていて、
オレはそのまま振り返り、
檜原を抱き締めていた。


「きゃっ…あの…⁈」


困惑している檜原の声が腕の中から聞こえ、
放さなきゃダメだと頭では思うのに、
懐かしい温もりと抱き心地に、
体が言うことをきかない。


「少しだけだから…」


さらに力を入れて檜原を抱き締めると、
何も変わっていない檜原の感触に
更なる欲求が止められなくなってしまう。


抱き締めていた腕を、
そのまま檜原の肩へと滑らし、
檜原を見つめ、顔を近づけた瞬間…


「…岩泉…さん…っ…」


「…っ‼︎」


真っ赤になった檜原に"岩泉さん"と呼ばれ、
漸く我に返った。


「悪い…忘れてくれ…」


オレは逃げるように檜原の家を出た。



何やってんだ、オレ…



最低だ…

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