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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


#04
-岩泉side-


思ってもなかった檜原からの誘いを、
断るべきなのに、オレは断れなかった。



昨日から誘惑に負けっぱなしだ…




さっき、檜原の敬語が崩れた瞬間、
昔に戻ったように感じた。


「会社で間違えたら困るから」と言って、
ずっと"岩泉さん"と呼んでいて、
檜原は敬語も崩さなかったのに、
二人で眠る時、ふと"ハジメくん"と
クスクス笑いながらオレの耳元で囁いて、
子どものように甘えてきた。


檜原に言ったコトはなかったが、
オレはそれが居心地がよかった。


オレ自身は、下の名前で呼ぶコトはおろか、
"好きだ"とことばにしたコトがあったかも
怪しいクセに…


もう一度、檜原の口から、
"ハジメくん"と呼ばれたいと思っているなんて、
檜原は思いもしない…よな。


「岩泉さん!」


もちろん、檜原の口から出るのは、
"ハジメくん"ではない。


それでも、オレにとっては貴重な瞬間だった。


「お待たせしました。
あの…そんなにたくさんは食べないですよね?」


そう言って出してくれたのは、
ご飯と味噌汁、だし巻き卵に冷奴。


「あぁ。十分だし、うまそうだ。」


週末に檜原と過ごすと、
大抵は朝飯は洋食だったが、
飲んだ翌日はいつも和食にしてくれていた。


「作ったの、お味噌汁と卵焼きだけですけど…」


「家じゃ作んねーもん。」


「作ってもらえばいいのに…」


「何か言ったか?」


向かいの席に座った檜原が、
小さい声で何かを言ったが、
聞こえなくて聞き返すと、
檜原は「何でもないです。」とはぐらかした。


その後は他愛もない会話をした。
仕事の話、バレーの話…
黒尾がチームに誘ったと聞いて、
一瞬ビックリしたが、
檜原と一緒にいられる時間が増える…
そう思うと胸が高なった。


全部自分のせいなのに…
4月から檜原と同じチームになって、
浮かれている自分に心底呆れてしまう。




檜原を傷つけたのは、オレなのに…


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