第48章 -選択-(岩泉/黒尾)
#03
-すみれside-
いい夢を見た。
昔に戻ったみたいな…
岩泉さんと飲んで、そのままウチに来て、
朝までずっと…ずっと一緒にいる夢。
目が覚めたら岩泉さんの腕の中で…
って、そんなのは、やっぱり夢で、
目が覚めて待っていたのは、
酷い頭痛となんだか引きつる表情筋…
あれ…昨日は…
記憶を辿りながら目を開ける…
…⁈
電気は付けていないけど、
カーテンの隙間から朝日が差し込んで、
部屋の中はよく見える。
部屋の隅に見覚えのない大きな固まりがある…
え…?何…?ひ…と…⁇男の人…⁈
頭は痛いはずなのに、
サーッと血の気が引いて、
上半身を起こして、
ベッドの隅に後ずさってしまう。
やだ‼︎何⁈泥棒⁈強姦⁈
どうすればいいの⁈
いつもスマホを置いている枕元には、
スマホがないし、
叫びたくても怖くて声が出ない…
本当に怖い時、人は声が出ないんだ…
急に冷静になってそんなコトまで考えてしまう。
ガサッ…
…っ⁈
寝ていたのか、
部屋の隅にいた男が突然動き出し、
隠れられるわけがないのに、
わたしは毛布を被って顔を隠した。
「ふぁ〜っ…ん?あぁ…檜原、起きてたか?」
え…?
え…⁈
ゆっくり毛布を下ろして、男の人を見る。
「岩泉さん⁈なんで⁈」
「なんでって…おまえが…」
「なんだぁ…よかったぁ…岩泉さんかぁ。」
「…⁈どうしたんだよ?」
「だって、目が覚めたら、部屋に男の人がいて、
泥棒か強姦かと思っちゃいました!
でも、岩泉さんでよかったぁと思って。」
はぁっと胸を撫で下ろしていると、
岩泉さんはバツが悪そうに下を向いてしまう。
「そうだよな…悪い…。」
「いえ‼︎わたしが勝手に……」
って、なんでウチに岩泉さんが…⁈
泥棒じゃなくて岩泉さんだったのは、
よかったけど…わたし、昨日…何して…⁈
「おまえ、昨日潰れたんだよ。覚えてねぇの?」
わたしの表情から察したのか、
岩泉さんがヒントをくれる。
…っ⁈だから…頭…痛いのか…
「で、誰もおまえんち知らないから、
オレが連れてきた。
帰ろうと思ったんだけど、
おまえ、寝ちまって、鍵掛けねぇし、
帰るに帰れなくて……悪いな。」