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〜Lemon Candy Story〜

第48章 -選択-(岩泉/黒尾)


タクシーが動き出してしばらくすると、
檜原が肩にもたれ掛かってきて、
酒の匂いに混じって、懐かしい匂いがする。


「んん…ふぁ…っ…」


「…っ‼︎」


欠伸のような寝惚けた檜原の声は、
酔っているからかどこか甘さを帯びていて、
久しぶりに聞く檜原の甘い声に
反応してしまう自分が情けない。


檜原から視線を外し、
窓の外を眺めて気を紛らわせようとしても、
気がつけば檜原は手を握ってくる。


「おい…檜原…大丈夫か?」


さすがに手は放したのに、
檜原は、大丈夫れすと、
明らかに大丈夫ではない声でかろうじて反応し、
また手を握ってきた。


相変わらず…小さくて柔らかい手だな…。



これくらい…許してくれな…


つい誘惑に負けて、心の中で謝ってから、
結局檜原の手を握り返してしまう。




オレにはそんな資格ないくせに…




幸い、手を握っている間は、
檜原は起きることなく、
無事に檜原のマンションに着き、
どうにか檜原に鍵を出させて、
一緒にエレベーターに乗り込み、
オレは久々に檜原んちのドアの前に立っていた。


「ほら、早く開けろ?」


「んっ…はぁ…ぃ…も…寝るぅ…」


返事してんだかなんだかわかんねぇけど、
なかなか鍵を開けないので、
堪らずオレが鍵を開け、檜原を玄関に座らせる。


「おい!靴脱げ?
で、オレが出たら、すぐ鍵掛けろよ?」


「ん…ふぁ…あ…岩泉…しゃ…ん…?
岩泉ひゃんだぁ…」


とろんとした目でジッとオレを見てくる檜原は、
オレに焦点を合わせると嬉しそうに微笑んだ。


「はぁ…そうだよ。オレだよ…
わかったなら、オレが出たら、鍵掛けろよ?」


抱き寄せたくなるのをグッと堪えて、
もう一度同じコトを言って出ようとすると、
突然檜原が立ち上がって、
あろうことか抱きついて…キスをしてきた。


「…っ⁈おいっ‼︎」


「やだぁ…帰っちゃ…やぁ…」


そのまま急に力が抜けたかと思うと、
檜原は、オレの腕の中で眠っていた。





…オレにどうしろっつーんだよ…


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