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〜Lemon Candy Story〜

第47章 -運命-(岩泉一)


-岩泉side-


昼のピークを終え、
[準備中]の看板を出そうと表に出ると、
ちょうどすみれが
看板を出しているところだった。


「お疲れさん。」


「ハジメくん⁈」


振り返ったすみれの笑顔が可愛くて、
平静を装っていたはずのオレの心臓は、
平静を装いきれず、飛び跳ねた。


「看板重いだろ?オレがやったのに。」


「全然‼︎いつもやってるし、ハジメくんのほうが
ずっと厨房で休憩無しで大変なんだから。」


「いや、すげぇ勉強になる。」


それでも、店の話になると、
少しずつ冷静さを取り戻していけた。


「それなら、よかったけど、ムリしないでね。
明日は定休日だし、ゆっくり休んで?」


「定休日かぁ…もったいねぇなぁ。」


「ふふ…ハジメくん、真面目すぎだよ。
ちゃんと休みも取らないと、
いいモノは作れないんだよ?」


「…そうだな。」


すみれにクスクスと笑われ、
タオルで汗を拭うふりをして顔を隠す。


厨房に入れないコトもそうだが、
本当はすみれに会えないコトを
"もったいない"と思っていたなんて、
すみれに気付かれるわけにはいかなかった。


ただでさえ、すみれは、
及川のナンパに嫌悪感を出していたのに、
たった2日で意識してるとか…
すみれだって、ありえねぇだろ…


「でも、休みとなると暇だな…
ココに行く以外、何も考えてなかったしな…」


観光地は調べてはいたけど、
店にいるだけで充実していたので、
どこかに行きたいとも思っていなかった。


「じゃあ、金比羅さんにでも行く?」


「金比羅さん?」


そういえば、ガイドブックで見たような…


「うん。御本堂まで階段が735段もあってね、
運動がてらよくお参りに行くんだ。
疲れるけど、頂上の景色もキレイなんだよー。
表参道にはお土産屋さんとかうどん屋もあるし…
って、急にごめん!
休みの日までうどんとか階段とか…
全然休めないよね。」


「いや、行きたい。」


「…ほんと?ほんとにほんと?いいの⁈」


オレの勘違いでなければ、
すみれはかなり喜んでいるように見えた。


「あぁ。」



願ったり叶ったり…
嬉しいのは、オレのほうなんだけどな。




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