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〜Lemon Candy Story〜

第47章 -運命-(岩泉一)


「わかってるってば!
今日はお客さん連れてきたんだもん。」


「客?そりゃ失礼したな。
いらっしゃい。好きな席に座ってくれ。」


「じゃ、2人ともココにしなよ。特等席♪」


すみれは明るい窓際の席に案内してくれ、
すぐにメニューとお茶を出してくれた。


「なんだ?オマエの友達か?」


「さっきそこでナンパされたの(笑)」


「はぁぁ⁉︎おいっ‼︎おまえら、表出ろっ‼︎」


「…っ⁈ちょっ…すみれちゃん⁉︎違うってば‼︎」


"ナンパ"ということばに
ものすごい反応を示した親父さんに
及川は慌てて首を横に振って否定する。


「あはは(笑)お父さん‼︎冗談だってば‼︎
ハジメくんたち、わざわざ東京から
ウチに来てくれたんだって。」


「は⁈そりゃ嬉しいけど、なんでまたウチに?」


「あの‼︎オレ…岩泉一っていいます。
今、料理の専門学校に通ってて、
日本の名産品についてレポート書くって
課題があって…」


オレは学校の課題のコト、
広島の宿で食べたうどんのコト、
ひとつひとつ話をした。


「そりゃ、嬉しいな。
じゃ、気合い入れて作らなきゃな。」


そう言って作ってくれたうどんは、
去年食べた時よりさらにうまく感じた。


「美味しい?」


「…っ⁈ゴホッ…ゲホッ…⁈あ…あぁ。」


黙々とうどんを食っていると、
目の前に座ってたすみれが、
オレの顔を覗き込んで聞いてきて、
思わずむせてしまう。


「岩ちゃん、汚いなぁ。すみれちゃんに
顔覗き込まれたからって慌てすぎだって。」


「うっせ、クソ川‼︎黙れっ‼︎」


「え…?」


及川のことばにキョトンとしているすみれ…
オレは誤魔化したくて
ついすみれの頭に手を伸ばし、
グイッと下を向けさせた。


「なんでもねぇって。すげぇうまい。」


「…っ⁈よかったぁ。
あ、わたし、お茶入れてくるね。」


すみれはさっきと何も変わらない態度で、
笑顔で答えてお茶を入れに行った…





と、思っていたが、
本当は、あの時のすみれは
顔が真っ赤だったらしい。





それを知ったのはだいぶ後なんだけど。

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