第47章 -運命-(岩泉一)
「あ…まだ一緒に仕事してるし、
なんだか慣れなくて…」
「でも、徹くんは
名前で呼んでって言うでしょ?」
「えっ⁈…はい。
でも、下の名前で呼ぶのも呼ばれるのも
なんだか慣れなくて、外では名字でって
お願いしていて…」
ぐいぐいすみれが質問攻めすると、
橘さんは苦笑いしながら答える。
「仕事中は仕方ないかもだけど、
そんなの気にしないで、
名前呼んじゃえばいいのに。」
「……。」
まぁ…すみれはそうだったよなぁ…
「なぁに?ハジメくん?」
呼び方の話から、すみれはどうだったか…
出会った時のコトを思い出していると、
すみれの声で現実に引き戻される。
「あぁ…オマエはどうだったかと思って…」
「すみれちゃんは速攻で
下の名前で呼んでたよー!」
「徹くん⁈」
酔いつぶれていたはずの及川の声で、
オレたち3人は一斉に及川のほうを向いた。
「そういえば、お二人のキューピッドは
及川さんて、本当なんですか?」
そいや、前に及川んちでそんな話、
コイツがしてたっけな…。
「キューピッドじゃないわよ。
初めて会った時に一緒だっただけ。
ね?ハジメくん♪」
「あぁ。」
「え⁈ちょっと‼︎あの時及川さんが
すみれちゃんに声掛けたから、
今の二人があるんだからね!!」
「あ!お二人の本当の馴れ初め聞きたいです!」
「ちょっ…ちえり⁈
"本当の"って、前に及川さんが話したじゃない⁈」
「…及川さんっ‼︎な…名前…っ…」
及川が橘さんに
何を吹き込んだのか突っ込もうとすると、
下の名前で呼ばれた橘さんはテンパり、
それを見た及川は涼しげな表情のまま、
「もういーじゃーん」と軽く言っている。
「馴れ初めってほどでもないけど、
ハジメくんがウチの実家のおうどん気に入って、
香川まで来てくれたのがキッカケだよねー。」
「だから、すみれちゃんちに行けたのは
及川さんのおかげなんだってばー!!」
すーがニコニコして話し始めると、
及川がまた口を挟んでくる。
つぅか、コイツ酔ってたんじゃねーのか?
すーに会った時かぁ…
懐かしいなぁ…