第47章 -運命-(岩泉一)
*現代*
-岩泉side-
「岩ちゃーん!日本酒足りなーい!」
「及川さん、今日飲み過ぎですよ?」
「だーいじょうぶ♪帰れなくなっても、
橘さんが連れて帰ってくれるでしょ?」
「お…及川さんっ‼︎」
「はぁ…おまえ、
ワイン派になったんじゃなかったのかよ?」
橘さんとクソ川が付き合うコトになったと、
すみれから話は聞いていたが、
二人揃ってウチの店に来るのは
今日が初めてだった。
まだ、結婚ではないにしろ、
今までとどことなく雰囲気の違う及川を
祝ってやりたい気持ちはあったが、
今日の及川はやたらテンションが高い。
橘さんとカウンターに座っているが、
酒のペースも早いし、
酔った時に見せる表情もいつもと違う。
「岩ちゃんが選んだ日本酒は
間違いないからね♪」
「褒めてもオマエにはもう出さねーよ。
いったん頭冷やせ!」
「岩ちゃんひどーい‼︎
橘さーん‼︎岩ちゃんがいじめるー!」
「いじめるって…。もう…。
及川さん、とりあえずお水飲んでください?」
ガンッといったん水を出すと、
及川はまた橘さんに甘え出し、
橘さんはさすがに呆れ顔…。
「徹くん、すっかりご機嫌ね♪
久しぶりにあーんな無防備な徹くん見たわ。」
「すー!」
奥の部屋にいたすーが戻ってきて、
案の定及川を見て呆れていた。
「奥の個室も片付け終わったから。」
「おう。ありがとな。」
「そろそろ帰らないと…」
他の客がいないコトに気付いた橘さんは、
慌てて帰ろうとしてしまうが、
もちろん帰らせるために話したのではない。
「えー?ちえりちゃん、帰らないでよ。
色々話聞きたいんだから♪」
「すみれさん⁈」
「すー、上がっていーぞ?
橘さんもクソ川放っといて、
すーの話し相手してやってくれや。」
「ね!ハジメくんもそう言ってるし…」
「でも、こんな状態の及川さん放置しちゃ…」
「そういえば、ちえりちゃんたち、
いつになったら、下の名前で呼ぶの?」
「え⁈」
そういや、クソ川にしては珍しく、
下の名前で呼んでねーな…。